「あなたは何年生まれですか?」
そんな質問から、干支の話になることがありますよね。
ねずみ年、うし年、とら年、うさぎ年……。
日本では、十二支の動物で答えることが多いと思います。
でも、ちょっと不思議なことがあります。
干支という言葉は、「干」と「支」という二つの文字でできています。
普段使っている十二支は、名前のとおり「支」のほうです。
では、もう一つの「干」は、どこにいったのでしょうか?
……実は、ちゃんとあるんです(笑)。
例えば、「甲子(きのえね)」という言葉があります。
「子」は、ねずみ年の「子」です。
では、「甲」は何でしょう。
これは「十干(じっかん)」と呼ばれるものの一つです。
そして、十干には、古代中国で発展した「陰陽五行(いんようごぎょう)」という考え方が結びついています。
さらに、この仕組みは、生まれた年月日時から人の性質や運勢を読み解く「四柱推命」にも使われています。
でも、ここで一つ疑問が生まれます。
木・火・土・金・水という自然の分類から、どうして人間の性格を説明することになるのでしょうか?
木の性質が強い人。
火の性質が強い人。
水が足りない人。
そんな説明を聞くことがあります。
では、その「性質」は、どこからやってきたのでしょう。
今回は、陰陽五行の歴史や仕組みを紹介しながら、人間が物事を分類し、そこに意味を与える面白さを考えてみましょう。
陰陽五行とは?陰陽説と五行説が結びついた考え方
陰陽五行とは、古代中国で発展した「陰陽説」と「五行説」が結びついた思想です。
まずは、二つに分けてみましょう。
陰陽説とは?
陰陽説は、自然や物事の働きを、互いに関係する陰と陽という二つの性質から捉える考え方です。
例えば、
昼と夜。
日なたと日かげ。
暑さと寒さ。
活動と休息。
こうした違いや、それぞれの関係、移り変わりに注目します。
ここで重要なのは、陰が悪くて陽が良いという話ではないことです。
例えば、昼は活動しやすい時間ですが、夜には休むための大切な役割もあります。
では、昼と夜のどちらが優れているのでしょうか。
……そう聞かれても、困りますよね(笑)。
陰陽説では、このような性質を、固定された善悪としてではなく、互いに関係しながら変化するものとして捉えます。
陰陽については、別の記事でも詳しく紹介しています。
→ 陰陽とは?陰が悪で陽が善ではない理由と、昼と夜から見る東洋思想
五行説とは?
一方、五行説では、自然界のさまざまな性質や働きを、五つに分けて捉えます。
それが、
木・火・土・金・水
です。
木は、植物が伸びていく様子。
火は、燃え上がる働き。
土は、物を受け止め、育む大地。
金は、金属が持つ性質や変化。
水は、潤し、流れ、下っていく働き。
こうした自然の特徴をもとに、さまざまなものを分類していきます。
ただし、五行説は、現代の化学のように「世界の物質は五種類の元素からできている」と説明するものではありません。
木・火・土・金・水という言葉には、物質としての意味だけでなく、性質、働き、変化、関係といった意味も含まれています。
英語でも、五行は Five Elements と訳されることがありますが、変化する働きに注目して Five Phases と表現されることもあります。
そして、陰陽と五行の考え方が組み合わされ、自然や時間の変化、人間社会などを説明する体系として発展していきました。
五行の「木・火・土・金・水」にはどんな意味がある?
では、五つの性質を、もう少し具体的に見てみましょう。
| 五行 | 読み方 | 象徴する働きや性質の例 |
|---|---|---|
| 木 | もく | 伸びる、成長する、広がる |
| 火 | か | 燃える、上昇する、熱を発する |
| 土 | ど | 受け止める、育てる、蓄える |
| 金 | ごん・きん | 引き締める、形を整える、変化する |
| 水 | すい | 潤す、流れる、下る |
例えば、木。
春になると、植物から新しい芽が出てきます。
葉が広がり、枝が伸びていきます。
こうした成長する働きを「木」と結びつけて考えることができます。
では、火はどうでしょう。
火は、熱を発しながら燃え上がります。
上に向かって炎が伸びる様子も見られます。
そこから、上昇や熱、活発な働きと結びつけられます。
一方、水には、潤したり、低い方へ流れたりする性質があります。
五行説では、こうした自然の特徴をもとに、さまざまな物事を理解しようとしてきました。
ここで、ちょっと面白いことがあります。
植物には、水が必要ですよね。
でも、五行の「木」と「水」は、別の分類です。
つまり、目の前の一本の木に、五行の木だけが関係しているわけではありません。
その木が育つためには、水も必要です。
土も必要です。
太陽の光も必要でしょう。
五行は、物を五つの箱に完全に分けて終わる仕組みではなく、働きや関係を見るためにも使われているのです。
五行は季節・方位・色とも結びついている
五行説の面白いところは、木・火・土・金・水だけで話が終わらないことです。
古代中国の思想では、五行と季節、方位、色などが結びつけられてきました。
代表的な対応は、次のようなものです。
| 五行 | 季節との対応 | 方位 | 色 |
|---|---|---|---|
| 木 | 春 | 東 | 青 |
| 火 | 夏 | 南 | 赤 |
| 土 | 季節の変わり目など | 中央 | 黄 |
| 金 | 秋 | 西 | 白 |
| 水 | 冬 | 北 | 黒 |
※伝統的な対応の一例です。時代や体系によって扱いが異なる場合があります。
こうして見ると、なかなか面白いですよね。
木は春。
火は夏。
金は秋。
水は冬。
では、土はどこに行くのでしょうか。
土だけ季節が違うのはなぜ?
五行は五種類ありますが、四季は四つです。
春・夏・秋・冬。
一つ余ってしまいますよね。
そこで、土は中央や季節の移り変わりなどに結びつけられています。
日本でも使われる「土用」という言葉は、こうした陰陽五行の思想と関係しています。
「土用の丑の日」という言葉なら、聞いたことがあるかもしれません。
土用は夏だけのものと思われがちですが、伝統的には季節の変わり目に関わる期間として、年に四回あります。
ここで少し考えてみましょう。
四季しかないのに、分類は五つ。
だったら、余った一つをどう扱うのか。
古代の人々は、その分類を用いて自然の循環を説明するために、いろいろな関係を考えてきたわけです。
自然そのものに五行という名前が書かれているわけではありません。
人間が自然を観察し、そこに分類を与えているのです。
そして、その分類を使うことで、今までとは違う関係が見えるようになります。
ただし、分類の仕方によって、見えるものも変わることがあります。
この話は、あとで人間の認識について考えるときにもつながってきます。
五行の相生とは?互いを生み出す関係
五行には、それぞれの性質を分類するだけでなく、五行同士の関係を説明する仕組みがあります。
その一つが「相生(そうしょう)」です。
相生とは、ある五行が別の五行を生み出すような関係を表します。
次のように循環します。
木 → 火 → 土 → 金 → 水 → 木

では、一つずつ見てみましょう。
| 関係 | 伝統的な説明のイメージ |
|---|---|
| 木生火 | 木が燃えて火が生じる |
| 火生土 | 火で燃えたものが灰となり、土に帰る |
| 土生金 | 土の中から金属や鉱物が得られる |
| 金生水 | 金属と水を象徴的に結びつける伝統的な関係 |
| 水生木 | 水が木を育てる |
木が火を生む。
水が木を育てる。
このあたりは、身近な自然からイメージしやすいですね。
一方で、
「金が水を生む」
という関係は、少し不思議に感じるかもしれません。
実際の金属が、そのまま水という物質に変化するわけではありませんからね。
ここで押さえておきたいのは、相生は、現代の化学反応をそのまま説明する法則ではないということです。
金生水も、五行説の体系の中で成立している象徴的な関係です。
つまり、木・火・土・金・水は、自然の性質を使いながら、互いの関係を説明する仕組みなのです。
相生は、必ず良いことなの?
さて、ここで一つ疑問があります。
「生み出す」というと、なんとなく良いことのように感じませんか?
新しいものが生まれる。
何かが育つ。
豊かになる。
そんなイメージがありますよね。
でも、例えば、火が燃え広がることを考えてみましょう。
キャンプで焚き火をしているなら、温かくて便利です。
でも、火事になったらどうでしょう。
木が燃えて火が広がっていくことは、必ずしも嬉しい出来事ではありません。
つまり、「生み出す」という関係があることと、それが人間にとって良いことかどうかは、同じではないのです。
では、相生とは反対の関係に見える「相剋」はどうなのでしょう。
五行の相剋とは?互いを抑える関係
もう一つの関係が「相剋(そうこく)」です。
相剋とは、ある五行が別の五行を抑えたり、制約したりする関係を表します。
次のように循環します。
木 → 土 → 水 → 火 → 金 → 木

こちらも、一つずつ見てみましょう。
| 関係 | 伝統的な説明のイメージ |
|---|---|
| 木剋土 | 木の根が土に入り、押し分ける |
| 土剋水 | 土が水の流れをせき止める |
| 水剋火 | 水が火を消す |
| 火剋金 | 火の熱が金属を溶かす |
| 金剋木 | 金属の刃物が木を切る |
例えば、水が火を消す。
これは、わかりやすいですね。
でも、ここでも一つ考えてみましょう。
水が火を消すことは、悪いことなのでしょうか?
もし、家が火事になっていたら?
消防士さんが水をかけて火を消してくれたら?
……ものすごく助かりますよね(笑)。
では、どうして「火を消す」という関係を、悪いことだと思ってしまったのでしょう。
「相剋」という漢字の印象でしょうか。
何かを抑えることは、悪いことだと思ったからでしょうか。
ここが面白いところです。
相生が善で、相剋が悪というわけではない
五行説では、相生と相剋の両方の関係を考えます。
生み出す働き。
抑える働き。
どちらも、五行同士の関係を説明するためのものです。
相剋だからといって、それだけで悪い関係と決まるわけではありません。
むしろ、ある働きを抑えることが、別のものにとって必要になる場合もあります。
例えば、庭で植物を育てているとします。
どんどん伸びてくれるのは嬉しいですよね。
でも、伸びすぎて隣の家に入り込んだら、枝を切る必要があるかもしれません。
伸びることが良い。
切ることが悪い。
そう単純には決められませんよね。
何が起きているのか。
何のために、その働きが必要なのか。
そこまで考えると、「生む」「抑える」という関係そのものに善悪を付ける必要はなくなってきます。
相生と相剋は、最初から善悪に分かれたものではないのです。
では、私たちは、なぜ何かを見たときに、すぐ「良い」「悪い」と判断することがあるのでしょう。
この疑問も、あとでそとがわメソッドの話につながってきます。
五行説は、いつ生まれたの?
では、五行説はいつごろ成立したのでしょうか。
古代中国では、自然を理解するために、さまざまな分類や思想が発展してきました。
五という数に特別な意味を見いだす考え方や、自然の物質・働きを数種類に分ける発想は、古い時代の文献にも見られます。
ただし、現在知られているような五行の体系が、最初から完成していたわけではありません。
『書経』の「洪範」と呼ばれる篇には、水・火・木・金・土の働きについての説明があります。
例えば、水は潤して下る。
火は燃えて上がる。
木は曲がったり伸びたりする。
といった説明です。
こうした考え方は、後の五行思想にもつながっていきます。
そして、戦国時代には、五行によって王朝の交替などを説明しようとする思想も展開しました。
その人物の一人として知られるのが、鄒衍(すうえん)です。
さらに漢代には、五行の考え方が陰陽説などとも結びつき、政治、暦、医学、儀礼など、広い分野に応用されるようになりました。
つまり、五行説は、一人の人物がある日突然完成させた体系というわけではありません。
長い時間をかけて、さまざまな思想や文化と結びつきながら発展してきたのです。
参考:Internet Encyclopedia of Philosophy「Wuxing」
陰陽と五行が組み合わさると、なぜ十干になるの?
さて、ここで最初の干支の話に戻ってみましょう。
「甲子(きのえね)」の「甲」は何だったのでしょうか。
実は、「甲」は十干の一つでした。
十干とは、次の十種類の文字です。
甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸
……全部読めますか?(笑)
なかなか難しいですよね。
でも、陰陽五行との関係を知ると、この十種類の意味もわかってきます。
五行がそれぞれ陰と陽に分かれる
五行は、木・火・土・金・水の五種類でした。
そして、陰陽説には陰と陽の二つがあります。
これらを組み合わせると、
5 × 2 = 10
という十種類の組み合わせができます。
それが、次のように十干へ割り当てられています。
| 五行 | 陽 | 陰 |
|---|---|---|
| 木 | 甲(きのえ) | 乙(きのと) |
| 火 | 丙(ひのえ) | 丁(ひのと) |
| 土 | 戊(つちのえ) | 己(つちのと) |
| 金 | 庚(かのえ) | 辛(かのと) |
| 水 | 壬(みずのえ) | 癸(みずのと) |
ここで、もう一つ面白いことがあります。
「きのえ」「きのと」という読み方です。
日本では、陰陽をそれぞれ「兄(え)」「弟(と)」に見立てる読み方が生まれました。
つまり、
木の兄だから「きのえ」。
木の弟だから「きのと」。
火の兄だから「ひのえ」。
火の弟だから「ひのと」。
というわけです。
この「え」と「と」が、私たちの使う「えと」という言葉にもつながっています。
ちなみに、十干そのものは、もともと古代中国で日を数える符号として使われていたものです。
最初から、五行と陰陽を説明するためだけに作られたわけではありません。
後に陰陽五行説と結びつくことで、現在知られているような対応関係が成立していきました。
干支はなぜ60種類なの?10×12なら120では?
さて、十干は10種類です。
十二支は12種類です。
では、これらを組み合わせると、全部で何種類になるのでしょうか。
普通に計算すると、
10 × 12 = 120
ですよね。
ところが、干支は「六十干支(ろくじっかんし)」と呼ばれ、60種類なのです。
……半分しかありません(笑)。
どういうことでしょうか。
十干と十二支は、一つずつ順番に進む
実は、干支は十干と十二支を自由に組み合わせているわけではありません。
どちらも、決められた順番で、一つずつ進んでいきます。
例えば、
1番目は「甲子」。
2番目は「乙丑」。
3番目は「丙寅」。
4番目は「丁卯」。
という具合です。
十干は、10回進むと最初に戻ります。
十二支は、12回進むと最初に戻ります。
では、二つが同時に最初の組み合わせへ戻るのは、いつでしょう。
10と12の最小公倍数は60です。
そのため、60組目まで進むと一巡して、次にまた「甲子」へ戻ります。
これが六十干支です。
つまり、10種類と12種類を全部自由に組み合わせているのではなく、二つの周期を同時に進める仕組みなのです。
還暦の「暦が還る」とは?
ここで、身近な言葉が登場します。
「還暦(かんれき)」です。
60歳になることを、還暦と呼びますよね。
これは、年の干支が60年で一巡し、生まれた年の干支に戻ることと関係しています。
毎年、干支が一つずつ進んでいく。
それが60年で、また最初の組み合わせに戻る。
だから「暦が還る」というわけです。
普段は十二支の動物しか意識していないかもしれません。
でも、その裏には、十干と十二支の二つの周期が働いているんですね。
同じ言葉でも、仕組みを知ると、今までと違うものが見えてきます。
四柱推命とは?生まれた年月日時を四つの柱にする占術
さて、ここから四柱推命の話です。
四柱推命(しちゅうすいめい)は、中国で発展した伝統的な占術の一つです。
生まれた年・月・日・時を、それぞれ干支で表し、その組み合わせから人の性質や運勢などを読み解こうとします。
四つの柱とは、次のものです。
| 柱 | 対応する情報 |
|---|---|
| 年柱 | 生まれた年 |
| 月柱 | 生まれた月 |
| 日柱 | 生まれた日 |
| 時柱 | 生まれた時刻 |
そして、それぞれの柱には、十干と十二支の二文字が割り当てられます。
二文字が四組。
つまり、全部で八文字です。
そのため、中国語圏では四柱推命を「八字(はちじ)」と呼ぶことがあります。
この八文字をもとに作られるのが、「命式(めいしき)」です。
生年月日がわかれば、そのまま干支に置き換えられるの?
ここで、少し複雑なことがあります。
例えば、2026年10月20日に生まれた人がいたとします。
では、単純に西暦2026年、10月、20日という数字を使って、すべての干支が決まるのでしょうか。
実は、そう単純ではありません。
四柱推命では、伝統的な暦の規則や二十四節気などを用いて、年月日時の干支を求めます。
例えば、流派で採用する暦の方式によっては、年の切り替わりに立春が関わります。
月の切り替わりにも、節気が関係します。
そのため、一般的なカレンダーで同じ月に生まれていても、命式上の月柱が異なる場合があります。
また、日の切り替わりや出生時刻の扱いにも、採用する規則の違いが関わることがあります。
つまり、四柱推命の命式は、ただ生年月日の数字を足したものではありません。
伝統的な暦や干支の規則を使って作るものなのです。
四柱推命では、日干も重要になる
四柱推命では、命式の中でも「日干(にっかん)」というものが重視されます。
日干とは、生まれた日の柱にある十干のことです。
例えば、日干が甲なら「木の陽」。
丁なら「火の陰」。
そうした分類になります。
そして、日干を基準にして、ほかの五行との関係などを読み解きます。
ただし、日干が「甲」だったからといって、それ一つで性格や人生がすべて決まるという説明ではありません。
実際の四柱推命では、ほかの干支や季節との関係、五行のバランスなど、さまざまな条件を組み合わせて解釈します。
だからこそ、同じ年に生まれた人が、全員同じ命式になるわけではないのです。
四柱推命自体の仕組みについては、別の記事でも詳しく説明しています。
陰陽五行と四柱推命は、どこでつながるの?
ここまでの話を、少し整理してみましょう。
まず、陰陽説があります。
そして、五行説があります。
それらが結びつき、十干や干支にも陰陽五行の意味が割り当てられてきました。
四柱推命では、生年月日時を干支によって表します。
そして、その干支に対応する陰陽五行の性質や関係を読み解きます。
つまり、陰陽五行は世界を分類し、関係を説明するための思想であり、四柱推命はその体系を使って生年月日時を解釈する占術なのです。
ここで、もう一つ大切な違いがあります。
生年月日時から干支を計算すること。
そして、その干支から人の性格や人生について説明すること。
この二つは、同じ作業ではありません。
計算できることと、性格がわかることは同じ?
例えば、生まれた日時を決められた規則で干支に変換したとします。
ある計算方法を採用すれば、同じ情報から同じ結果を求めることができます。
でも、そこで出てきた干支に、
「行動力がある」
「慎重な性格」
「人間関係で苦労しやすい」
といった説明を加えることは、別の段階です。
そこでは、占術の体系に基づく解釈が行われています。
暦の規則に従って文字を求められることと、その文字が性格や運勢を正確に表していることは別なのです。
もちろん、四柱推命の解釈にも、長い歴史や独自の体系があります。
ただし、出生時の陰陽五行の配置から人の性格や運命を正確に予測できることが、科学的に確立されているわけではありません。
ここを分けておくと、四柱推命を一つの伝統的な思想・占術として理解しながら、現実の事実確認と混同せずに考えられます。
「あなたは火の性質が強い」と言われたら?
さて、ここからは少し身近な話です。
例えば、四柱推命を受けたとします。
そして、
「あなたは火の性質が強い人ですね」
と言われました。
どう感じるでしょうか。
「えっ、火?」
と思うかもしれません。
でも、そのあと、
「情熱的で、行動力があるタイプです」
と説明されたとします。
すると、
「確かに! 私、思い立ったらすぐ動くことがある!」
と思う人もいるでしょう。
反対に、
「いや、私、かなり慎重なんですけど……」
と思う人もいるかもしれません。
でも、ここで少し考えてみてください。
最初に「火」という言葉を聞いたとき、何を想像しましたか?
炎でしょうか。
熱でしょうか。
勢いでしょうか。
では、
「火のように情熱的です」
と言われたら?
今度は、人間の性格についての話になります。
さらに、
「火が強いので、短気になりやすいです」
と言われたらどうでしょう。
……急に、あまり嬉しくなくなるかもしれませんね(笑)。
でも、ここで変わっていないことがあります。
占術の計算結果は、ずっと同じままなのです。
その結果を「情熱的」と説明するか。
「短気」と説明するか。
どの特徴に注目するかによって、受け取る印象が変わることがあります。
もちろん、実際の四柱推命は、単純に一つの五行から性格を決めるだけの体系ではありません。
ただ、この例から、人間が説明をどう受け取るのかを考えることができます。
「火が強い」は、どうして「短気な性格」になるの?
ここでもう一度、整理してみましょう。
最初にあったのは、命式の中で「火」に分類されるものが強いと説明されたことでした。
でも、そのあと、
「私は情熱的な人なんだ」
と思うことがあります。
あるいは、
「私は短気な人間なんだ」
と思うこともあります。
さらに、
「そういえば、昨日も怒ってしまったな」
と思い出すかもしれません。
そして、
「やっぱり、私は短気なんだ」
と納得することもあるでしょう。
さて、ここで何が起きているのでしょうか。
まず、ある分類についての説明を聞きました。
その説明に合う経験を思い浮かべました。
そして、その経験をもとに、自分自身の性格を判断したのかもしれません。
ここでは、占術の計算結果だけでなく、その説明を聞いている人間自身の記憶や意味づけが関わっている可能性があります。
これは数秘術や西洋占星術でも考えられることです。
日本心理学会でも、占いが当たっているように感じられる理由の一つとして、バーナム効果などが紹介されています。
ただし、すべての人が同じ理由で占いに納得しているわけではありません。
それでも、ここには面白い問いが生まれます。
なぜ、その説明を自分のことだと感じたのでしょう。
どんな経験を思い出したのでしょう。
そして、その説明を自分に当てはめることが、なぜ必要になったのでしょうか。
→ 占いが当たっていると感じるのはなぜ?バーナム効果と人間の認識の仕組み
「水が足りない」と言われたら、本当に足りなくなる?
では、今度は別の例です。
四柱推命で、
「あなたは水の性質が弱いですね」
と説明されたとします。
そのあと、
「もっと落ち着いたほうがいいかもしれません」
と言われたら、どうでしょうか。
「えっ、私って落ち着きがないのかな?」
と思うかもしれません。
そこで、過去を振り返ってみます。
「あのとき、焦って失敗したな」
「昨日も慌ててしまったな」
「そういえば、私はいつも余裕がない気がする」
なんて、いろいろ思い出すかもしれません。
では、さらに、
「水の性質を補ったほうがいい」
と言われたとします。
すると、今度は、
「私は水が足りない人間なんだ」
と思うかもしれません。
……さて、本当に何が足りないのでしょうか?
もちろん、四柱推命には五行の過不足やバランスについての独自の解釈があります。
でも、ここで見ているのは、その解釈を聞いた人間の認識です。
最初は、占術の体系の中で水の働きが弱いと説明されただけでした。
ところが、その説明によって、
「私は落ち着きのない人間だ」
「もっと冷静にならなければいけない」
「今の私は足りていない」
という意味が生まれることがあります。
ここで、もう一つ考えてみましょう。
いつから、冷静でなければならないことになったのでしょうか?
そして、冷静でない自分は、なぜダメなのでしょう。
もちろん、落ち着いて対応したほうがよい場面もあります。
実際に失敗を減らすための工夫が必要な場合もあるでしょう。
でも、それと、
「冷静でない自分には価値がない」
という意味づけは、同じではありません。
そとがわメソッドでは、こうした違いを観察することができます。
五行の分類から、自分の「当たり前」を考えてみる
陰陽五行は、自然を五つの性質から捉える思想でした。
では、私たちは普段、どんな分類を使っているのでしょうか。
例えば、人間について、
「慎重な人」
「行動的な人」
「優しい人」
「気が強い人」
などと説明することがあります。
でも、ここで少し考えてみましょう。
例えば、会議でなかなか発言しなかった人がいます。
その人について、
「慎重な人だね」
と言うこともできるでしょう。
でも、別の人は、
「消極的な人だね」
と言うかもしれません。
さて、何が変わったのでしょう。
会議で発言しなかったという出来事は、同じです。
でも、「慎重」と「消極的」では、受け取る印象が変わることがあります。
さらに、
「慎重な人だから、よく考えているんだね」
と言われたら、嬉しく感じるかもしれません。
反対に、
「消極的だから、もっと積極的になりなさい」
と言われたら、嫌な気持ちになるかもしれません。
最初の行動は、変わっていないのに。
分類の仕方や、そこに付けられた意味によって、反応が変わることがあるのです。
そとがわメソッドでは、こうした人間の認識の仕組みを見ていきます。
出来事と色づけを分けると、何が見えてくる?
例えば、先ほどの「あなたは短気な性格です」という説明を考えてみましょう。
占いで、そう言われました。
そのとき、
「嫌だな」
と思ったとします。
では、何が嫌だったのでしょうか。
「短気」という言葉の印象でしょうか。
短気な人は嫌われると思ったからでしょうか。
怒ることは悪いことだと思っていたからでしょうか。
あるいは、過去に怒ってしまった経験を思い出したのかもしれません。
どんなことが関わっているのかは、人によって違います。
そとがわメソッドでは、まず出来事と色づけを分けて見ていきます。
例えば、
「占いで短気だと言われた」
という出来事がありました。
そこに、
「短気な人は嫌われる」
という意味が加わったとします。
さらに、
「嫌われたら困る」
という必要が関わっていたとします。
すると、不安になったり、自分の性格を直そうとしたりすることがあるかもしれません。
ここで見えてくるのは、単に「短気」という言葉だけではないのです。
自分の中で、どんな意味や必要性が生まれているのか。
そこを観察できます。
一次反応と二次反応も見てみる
さらに、
「短気だと言われて嫌だった」
とします。
そのあと、
「占いの一言くらいで気にするなんて、私はダメだな」
と思ったとしたら、どうでしょうか。
最初は、短気だと言われたことに反応していました。
でも、今度は、その言葉を気にしている自分に反応しています。
ここでは、
「気にするのは良くない」
「もっと堂々としていなければならない」
といった意味が加わっているかもしれません。
そとがわメソッドでは、こうした反応に対する反応を、二次反応として観察することがあります。
そして、さらにもう一つ問いを向けます。
なぜ、その言葉を気にしてはいけないのでしょうか?
そもそも、何かを気にすることが問題になったのは、いつからなのでしょう。
このように、最初の反応を変えようとするだけでなく、その反応を否定する必要が生まれた仕組みまで見ることができます。
相生と相剋を知ると、「良い・悪い」の判断も面白くなる
さて、ここで五行の話に戻ってみましょう。
相生は生み出す関係。
相剋は抑える関係。
でも、どちらも単純に善悪が決まるものではありませんでした。
例えば、誰かから注意されたとします。
その注意によって、今まで気づかなかったことがわかったかもしれません。
一方、言い方がきつくて、嫌な思いをしたかもしれません。
では、その注意は良いことだったのでしょうか。
それとも悪いことだったのでしょうか。
どの部分に注目するかによって、説明が変わることがあります。
もちろん、実際に理不尽な注意だった場合もあります。
必要な改善点を指摘された場合もあるでしょう。
でも、ここで考えたいのは、何を基準に「良い」「悪い」を判断したのかということです。
例えば、
「自分の成長につながったから良いことだ」
と感じる人もいるかもしれません。
一方、
「強い口調で言われたから嫌なことだ」
と感じる人もいるでしょう。
同じ出来事の中に、複数の側面がある場合もあります。
そとがわメソッドでは、そうした出来事に付けられた意味や、その意味が必要になった仕組みを見ていきます。
善悪の判断を無理になくすのではなく、なぜその判断が生まれたのかを知る。
ここが大切なところです。
陰陽五行とそとがわメソッドは、同じ考え方なの?
ここまで読むと、陰陽五行とそとがわメソッドには、共通するところがあると感じるかもしれません。
例えば、物事を固定的な善悪だけで捉えないところです。
また、あるものを理解するときに、関係や分類の仕方に注目する点にも、考えを広げる接点があります。
ただし、二つは同じものではありません。
陰陽五行が扱うこと
陰陽五行は、古代中国で発展した自然や世界を理解するための思想です。
陰と陽。
木・火・土・金・水。
それらの性質や関係を使い、自然、暦、方位、季節、人間社会などを説明してきました。
そして、その体系は、四柱推命などの占術にも利用されています。
そとがわメソッドが扱うこと
一方、そとがわメソッドでは、人間が出来事をどのように受け取り、そこにどんな意味づけを行っているのかを観察します。
例えば、
「あなたは短気です」
と言われたとします。
そとがわメソッドでは、
その言葉を聞いた。
その言葉にどんな意味を付けた。
どんな過去の経験を思い出した。
何が危険になった。
どんな反応が生まれた。
さらに、その反応をどう評価した。
そうした働きを分けて見ていきます。
そして、
「なぜ、その意味づけや反応が必要になったのでしょうか?」
という問いを向けます。
これは、陰陽五行の分類をそのまま人間の反応に当てはめることではありません。
陰陽五行には、陰陽五行としての歴史と思想があります。
そとがわメソッドには、人間の認識と防衛反応を観察するための独自の枠組みがあります。
似ている部分があっても、何を説明するためのものなのかは異なるのです。
「私はこういう性格だから」と決める必要はある?
最後に、もう一つだけ考えてみましょう。
例えば、
「私は火の性質が強いから、短気なんだ」
と思ったとします。
そして、誰かにイライラしたとき、
「やっぱり、私は火が強いから仕方ない」
と思ったとします。
さて、ここで何が起きているのでしょう。
最初は、占術で性質についての説明を聞いただけでした。
でも、その説明が、今度は自分の行動を説明する理由になっているかもしれません。
さらに、
「火が強い私は、怒りっぽい人間だ」
という自己イメージになっているかもしれません。
では、その人は、いつでも怒っているのでしょうか。
穏やかなときもあるかもしれません。
怒る必要がなかった場面もあるでしょう。
何かを守ろうとして、強く反応した場面もあるかもしれません。
それでも、一つの性格の説明だけで、自分の全部を理解したつもりになっていることがあります。
そとがわメソッドでは、こうした自己イメージも観察できます。
「私はこういう人間だ」という説明は、いつ、どんな必要から生まれたのでしょうか?
自分を理解するために必要だったのでしょうか。
誰かに説明するためだったのでしょうか。
自分の行動に理由を付けたかったのでしょうか。
何かを守る必要があったのでしょうか。
そうしたことを知ることができます。
そして、もし怒りや不安などの反応が、自分を守るために必要になっていたとしたら、その反応があるという理由だけで自分を否定する必要はあるのでしょうか。
そとがわメソッドでは、反応をなくそうとする前に、その反応が成立している仕組みを見ていきます。
陰陽五行を調べていたはずなのに、いつの間にか自分の認識の仕組みまで気になってきましたね(笑)。
でも、こういうところが人間の面白さなのだと思います。
よくある質問
Q. 陰陽五行とは、簡単にいうと何ですか?
古代中国で発展した陰陽説と五行説が結びついた思想です。
陰陽は互いに関係する二つの性質、五行は木・火・土・金・水の五つの性質や働きから、自然や物事の変化を説明します。
Q. 陰陽五行と五行説は同じものですか?
五行説は、木・火・土・金・水によって自然の性質や働き、関係を説明する思想です。
陰陽五行は、この五行説と陰陽説が結びついた体系を指します。
Q. 木・火・土・金・水は、人間の性格の種類なのですか?
もともとは、自然界の性質や働き、変化を説明するための分類です。
四柱推命などの占術では、五行を人の性質や運勢などの解釈にも用います。
Q. 相生は良くて、相剋は悪いという意味ですか?
いいえ。
相生は生み出す関係、相剋は抑える関係を表します。
それだけで善悪が決まるわけではありません。
Q. 干支はなぜ60種類なのですか?
十干が10種類、十二支が12種類あり、それぞれが一つずつ順番に進みます。
10と12の最小公倍数は60なので、60組で最初の組み合わせに戻ります。
Q. 十干の「甲」と「乙」は、どう違うのですか?
陰陽五行との対応では、どちらも「木」に分類されます。
甲は木の陽、乙は木の陰に対応しています。
Q. 四柱推命と陰陽五行は同じものですか?
同じものではありません。
陰陽五行は自然や世界を説明する思想で、四柱推命はその体系を用いて生年月日時を解釈する占術です。
Q. 四柱推命と日本の陰陽道は同じものですか?
同じものではありません。
四柱推命は、中国で発展した出生日時を用いる占術です。
日本の陰陽道は、中国から伝わった陰陽五行説などの知識が、日本の暦・天文・占い・儀礼などと結びついて発展した体系です。
Q. 四柱推命で「火が強い」と言われたら、情熱的な性格ということですか?
四柱推命には、火の性質やほかの五行との関係を解釈する独自の体系があります。
ただし、火が強いという解釈だけで、現実の性格が科学的に確定するわけではありません。
Q. そとがわメソッドでは、陰陽五行を使って性格を分析するのですか?
いいえ。
そとがわメソッドでは、陰陽五行の分類によって性格を決めることを目的にしていません。
人間が何かを見たり、説明を聞いたりしたときに、どんな意味づけや防衛反応が生まれているのかを観察します。
まとめ|分類を知ると、世界の見え方は変わる
陰陽五行は、自然にあるさまざまな性質や働きを、陰陽と木・火・土・金・水という分類から理解しようとする思想です。
その体系には、相生と相剋という関係があります。
そして、陰陽五行は十干や干支などとも結びつき、四柱推命のような占術にも使われてきました。
でも、ここで考えてみたいことがあります。
木・火・土・金・水という分類。
そこに付けられた意味。
そして、その説明を聞いた人間の反応。
この三つは、同じではありません。
例えば、
「火の性質が強い」
と言われたとします。
そのとき、
「情熱的なんだ!」
と思うこともあるでしょう。
でも、
「短気なんだ……」
と思うこともあるかもしれません。
さらに、
「もっと穏やかな人間にならなければ」
と考え始めることもあるでしょう。
ここで、最初の計算結果は何も変わっていません。
でも、その説明から、いろいろな意味が生まれています。
そして、その意味によって、自分の感じ方まで変わることがあります。
そとがわメソッドでは、こうした認識と反応の仕組みを観察していきます。
何を見たのでしょう。
何を聞いたのでしょう。
そこに、どんな意味を付けたのでしょう。
なぜ、その意味が必要になったのでしょう。
そして、その反応が生まれた自分を、さらに否定する必要はあるのでしょうか。
陰陽五行は、古代の人々が世界をどのように理解しようとしたのかを知るための、興味深い思想です。
そして、そこから、人間は今もさまざまな分類や意味づけを通して世界を見ているということにも気づけます。
同じ世界でも、何に注目し、どんな意味を与えるかによって、見えるものは変わる。
この仕組みを知ること自体が、なかなか面白いものですよね(笑)。
参考資料
- 国立国会図書館「日本の暦|干支①六十干支」
- Internet Encyclopedia of Philosophy「Wuxing(五行)」
- Internet Encyclopedia of Philosophy「Yinyang(陰陽)」
- コトバンク『五行説』
- コトバンク『五行相生』
- コトバンク『相剋』
- コトバンク『八字』
- 日本心理学会「占いが当たっているように感じるのはなぜ?」
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人間の認識と反応の仕組みを、もっと知りたい方へ
「どうして、同じ出来事でも人によって感じ方が違うんだろう?」
「なぜ、自分の性格を説明されると、嬉しくなったり嫌になったりするんだろう?」
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そとがわメソッドでは、出来事と色づけ、一次反応・二次反応、防衛反応が必要になる仕組みなどを、日常の具体例から順番に見ていきます。
何かを無理に信じるためでも、考え方を正しいものに変えるためでもありません。
自分がどんなふうに世界を受け取り、なぜその反応が必要になっているのかを知るためです。
同じ出来事でも、そこに付けられた意味は同じとは限りません。
そして、どんな意味を付けたのかによって、自分の反応まで変わることがあります。
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