カタカムナの音には意味がある?「ブーバ・キキ」と音象徴から考える言葉の不思議

突然ですが、ちょっとした実験をしてみましょう。

目の前に、二匹の不思議な生き物がいると想像してください。

一匹は、丸くてふわふわ。

もう一匹は、トゲトゲで、ちょっと鋭そうな形をしています。

さて、この二匹に名前を付けることになりました。

候補は二つです。

「ブーバ」

「キキ」

どちらを丸い生き物の名前にしますか?

……。

何となく、

丸い方が「ブーバ」。

トゲトゲした方が「キキ」。

そんな感じがしませんか。

では、もう一つ質問です。

どうしてですか?

……。

いや、どうしてと言われても。

ブーバはブーバっぽいし、キキはキキっぽいやん!w

そう思いませんでしたか。

でも、ちょっと待ってください。

「ブーバ」も「キキ」も、今ここで出てきた架空の生き物の名前です。

どんな性格なのか。

どんな生態なのか。

どんな鳴き声なのか。

何も知りません。

それなのに、どうして形と名前が合っているように感じるのでしょう。

実は、これには心理学や言語学で研究されている現象が関係しています。

しかも、こうした音の印象は、日本語だけの話ではありません。

世界のさまざまな言語を使う人たちの間でも、似た傾向が見られています。

では、ここでもう一つ。

カタカムナという言葉を聞いたことはありますか?

カタカムナについての解釈の中には、一つひとつの音に意味があるとする考え方があります。

例えば、「カ」「タ」「ム」「ナ」。

それぞれの音から、世界や生命についての意味を読み解くというのです。

さて。

音から形を感じる「ブーバ・キキ」。

音に意味を見いだす「カタカムナ」。

どちらも、音と意味の話ですよね。

では、同じことなのでしょうか。

そして、そもそも私たちは、なぜ音に何かを感じるのでしょう。

今日は、そんな言葉の不思議を探ってみましょう。

目次

「ブーバ・キキ効果」とは?知らない言葉なのに形が浮かぶ

最初の二匹の生き物に戻りましょう。

丸い生き物。

トゲトゲした生き物。

ブーバ。

キキ。

多くの人は、丸い形をブーバ、角ばった形をキキと結びつける傾向があります。

この現象は、ブーバ・キキ効果と呼ばれています。

もちろん、誰もが必ず同じ答えを選ぶわけではありません。

でも、偶然だけでは説明しにくい、一定の傾向があることが研究されています。

ちょっと不思議ですよね。

例えば、

「この生き物はブーバという名前です」

と教わったら、その名前を覚えることはできます。

でも、最初の実験では、どちらがブーバなのか教わっていません。

それなのに、何となく選べる人が多いんです。

つまり、言葉の意味を学んでいなくても、音の特徴と形の印象を結びつける場合があるということです。

さて、ここからがさらに面白いところです。

25言語を調べても、ブーバは丸かった

2021年にオンライン公開された研究で、Ćwiekらの研究チームは、ブーバ・キキ効果をさまざまな言語の話者で調べました。

対象になったのは、25言語です。

しかも、その言語は九つの言語系統、十種類の文字体系にまたがっていました。

英語だけ。

日本語だけ。

あるいは、同じ文化圏の人だけ。

そんな調査ではありません。

その結果、言語や文字体系が違っていても、ブーバを丸い形に、キキをとがった形に対応させる傾向が広く確認されました。

これ、かなり興味深いですよね。

言葉そのものは違います。

普段使う文字も違います。

それまで学んできた語彙も違います。

なのに、似た答えが出てくる。

……もしかして、「ブーバ」という名前には、本当に丸い感じがあるのでしょうか。

ただし、この研究から、

「世界中の人が全員同じように感じる」

とまでは言えません。

個人差はあります。

実験の条件や言語経験による違いもあります。

また、音の印象と形の対応が広く見られることと、その対応が生まれつき完全に決まっていることも別です。

それでも、言語や文字が違っても共有される傾向があるという発見は、面白いですよね。

参考:Ćwiekほか「The bouba/kiki effect is robust across cultures and writing systems」

ところで、言葉の名前って誰が決めたの?

さて、ここで少し別のことを考えてみましょう。

目の前に、リンゴがあります。

赤くて、丸くて、食べられる果物です。

日本語では「リンゴ」と呼びます。

英語では「apple」。

スペイン語では「manzana」。

では、質問です。

あの果物は、どうして「リンゴ」という音でなければならないのでしょう。

……。

別に、リンゴじゃなくてもよさそうですよね。

実際、ほかの言語では違う名前で呼ばれています。

リンゴ自身が、

「私の名前はリンゴです」

と名乗ったわけでもありません。

では、私たちはどうやって「リンゴ」という言葉を知ったのでしょう。

誰かが教えてくれました。

周りの人が使っていました。

何度も聞いているうちに、あの果物と「リンゴ」という言葉が結びついていきました。

言語学には、言葉の形と意味の関係が必ずしも自然に決まっているわけではない、という重要な考え方があります。

これを言語記号の恣意性と呼びます。

「恣意性」というと、何だか難しいですね。

でも、ここでは簡単に、

「ものの名前は、その音でなければ絶対にいけないわけではない」

と考えると分かりやすいと思います。

そして、ここで面白いことが起きます。

言葉の音と意味は、必ずしも決まった関係ではない。でも、音によって特定の印象を感じることはある。

……どっちやねん!w

と思うかもしれません。

でも、実は両方とも成り立ちます。

言葉の多くは、共同体の中で使われ、学ばれるものです。

一方、音と意味の間に、ある種の似ている感じや対応が見られることもあります。

そこを研究するのが、音象徴なんです。

音象徴とは?音に「それっぽさ」を感じる現象

音象徴(おんしょうちょう)とは、言葉の音と、ものの性質や感覚的な印象などとの間に、一定の対応が見られる現象です。

最初のブーバ・キキも、音象徴の一つです。

例えば、ブーバという音。

何となく、丸くて、柔らかくて、ゆったりしたものを想像するかもしれません。

一方、キキという音。

何となく、小さく鋭いものや、角ばったものを想像するかもしれません。

もちろん、すべての人が同じように感じるわけではありません。

でも、多くの人に似た傾向が見られます。

ところで、音象徴という言葉は知らなくても、私たちは普段から、音と印象の関係を使っているかもしれません。

例えば、日本語のオノマトペです。

「さらさら」と「ざらざら」は、どこが違う?

さて、ここで質問です。

「さらさら」

「ざらざら」

どんな感じがしますか。

さらさらは、細かい砂が手から落ちていく感じでしょうか。

それとも、なめらかな髪の毛でしょうか。

一方、ざらざらは、粗い紙や砂利を触っている感じかもしれません。

さて、実際には何も触っていません。

ただ、言葉を読んだだけです。

それなのに、何となく手触りを思い浮かべられる人もいるでしょう。

ほかにもあります。

「ころころ」

「ごろごろ」

どちらも、何かが転がる様子を表すことがあります。

でも、何となく大きさが違う感じがしませんか。

小さなビー玉なら、ころころ。

大きな岩なら、ごろごろ。

そんな使い分けが自然に感じられるかもしれません。

ただし、これは日本語の話です。

私たちは「さらさら」や「ごろごろ」という言葉を、これまで何度も聞いてきました。

そのため、言葉から感じる印象には、音そのものの特徴だけでなく、日本語を使ってきた経験も関わっています。

そこは、ブーバ・キキのような架空の言葉を使う実験と、少し分けて考える必要があります。

でも、同じ「音と感覚」というテーマにつながっています。

参考:伊東真美(2009)「日本語の擬態語の音象徴について認知言語学的視点から」

音を聞いたとき、私たちは何を感じ取っているの?

さて、ここからはもう少し科学の話です。

ブーバとキキ。

どうして、丸い形ととがった形に対応する傾向があるのでしょう。

考えられている要因の一つが、音響的な特徴です。

2022年、FortとSchwartzは、ブーバ・キキ効果について、音の物理的な特徴に注目した研究を発表しました。

研究では、特に二つの特徴が検討されています。

一つは、音に含まれる周波数成分のバランス。

もう一つは、音の時間的な連続性です。

簡単にいえば、どのような高さの成分を含んでいるか、音がどれくらい滑らかにつながっているか、ということです。

研究では、低い周波数成分が目立つ音や、時間的になめらかな音が、丸い形に結びつきやすい傾向が示されました。

一方、高い周波数成分が目立つ音や、変化が急な音は、とがった形に結びつきやすい傾向が示されています。

しかも、この研究では、言葉ではない人工的な音でも、形との対応が調べられています。

つまり、ブーバとキキという単語そのものだけでなく、音が持つ特徴と、形の印象との関係が研究されているんです。

ここで、ちょっと想像してみてください。

丸いものが、なめらかに転がっています。

ごろごろ、ごろごろ。

一方、角ばったものが、硬い床を転がっています。

ガタガタ、カタカタ。

何となく、音の違いを想像できませんか。

もちろん、実際に出る音は、物の材質や大きさ、床の状態などにも左右されます。

丸いものなら必ず低い音がする、という単純な法則ではありません。

ただ、研究では、こうした形と音の物理的な関係が、音象徴の成立に関わる可能性が示されています。

形と音って、別々の感覚なのに、どこかでつながっているのかもしれない。

そう思うと、なかなか面白いですよね。

参考:Fort & Schwartz(2022)「Resolving the bouba-kiki effect enigma」

音を「聞く」だけじゃない?口の動きも関係するらしい

さて、ここで、さらに不思議な研究を紹介しましょう。

「ブーバ」

「キキ」

よかったら、実際に声に出してみてください。

ブーバ。

キキ。

どうでしょう。

口の動きが違いますよね。

ブーバの方は、唇を使い、口を丸めるような動きが含まれます。

キキの方は、舌の動きや、比較的狭い母音の発音が関係しています。

もちろん、言語や発音の仕方によっても違いがあります。

でも、ここで考えてみたいのは、音を聞くことだけでなく、音を作るために身体を動かしているという点です。

2025年、今井むつみさんらの研究チームは、音象徴と、発音するときの動きの関係を調べました。

この研究には、耳から音を聞くことに困難のある参加者も含まれています。

興味深いことに、重度の聴覚障害がある参加者でも、音と形の対応について、聞こえる参加者と同程度に判断できる場合がありました。

さらに、発音に関わる口の動きを制限すると、判断に影響が見られました。

この結果は、音象徴が耳から聞こえる音だけではなく、発音するときの身体的な動きとも関係する可能性を示しています。

もちろん、この研究だけで、音象徴の仕組みがすべて解明されたわけではありません。

でも、

「音を聞いたとき、どんな印象を持つのか」

という話に、

「その音を発音するとき、身体はどう動くのか」

という視点が加わるんです。

音の研究をしていたら、口の動きの話になってきました。

人間って、何をするにも、なかなか複雑ですね。w

参考:今井むつみほか(2025)「Does sound symbolism need sound?」

では、音から感じる印象は、生まれつき決まっているの?

さて、ここまでの研究を見て、

「ということは、音の意味は最初から決まっているんだ!」

と思うかもしれません。

でも、そこには、もう一つ考えることがあります。

それは、経験です。

例えば、日本語を話す人なら、

「ごろごろ」

という言葉から、大きなものが転がる様子や、雷の音などを思い浮かべることがあるでしょう。

でも、日本語を知らない人はどうでしょう。

同じ音から、必ず同じ意味を思い浮かべるのでしょうか。

ここを考えるうえで、2024年の研究があります。

IidaとAkitaは、日本語と英語の母語話者に、日本語のオノマトペや英語の対応表現について、音と意味がどれくらい似合っていると感じるかを評価してもらいました。

その結果、参加者は、自分が使い慣れている母語の言葉について、音と意味の対応を強く感じる傾向がありました。

また、言葉に親しんでいることも、その印象を強めていました。

つまり、

「この音は、この意味にぴったり!」

と感じることには、これまでにその言葉を聞き、使ってきた経験も関係するんです。

ここ、面白いですよね。

最初は何も知らなかった言葉でも、何度も使っているうちに、

「もう、この音以外は考えられない!」

というくらい自然に感じることがあります。

でも、別の言語を使う人にとっては、まったく違う音が自然かもしれません。

人間に広く見られる音の印象もあれば、学んできた言葉だからこそ強く感じる印象もある。

両方が関わっている可能性があるんですね。

参考:Iida & Akita(2024)「Iconicity Emerges From Language Experience」

「音に意味がある」と言うとき、何を意味と呼んでいるんだろう?

さて、ここまで、いろいろな研究を見てきました。

ブーバは丸い形に結びつきやすい。

キキはとがった形に結びつきやすい。

さらさらとざらざらでは、受け取る印象が違う。

音の響きや発音するときの動き、言語経験も関係する。

では、ここで質問です。

「ブーバには丸い意味がある」と言っていいのでしょうか。

日常的な会話なら、そう表現しても伝わるかもしれません。

でも、研究上は少し丁寧に分けることができます。

ブーバという音を聞いた人が、丸い形を選びやすい。

これは、実験で調べられることです。

では、ブーバという音そのものに、世界のどこでも変わらない「丸さの本質」が宿っているのでしょうか。

これは、別の問いになります。

何となく、似ているように聞こえますよね。

でも、調べていることが違います。

「この音を聞いた人は、どんな形を連想しやすいか」

という問いと、

「この音には、宇宙に共通する意味があるか」

という問いは、同じではありません。

この違いが、カタカムナの話につながってきます。

カタカムナとは?一つひとつの音から世界を読み解く考え方

さて、ここでカタカムナの登場です。

カタカムナは、独特の図象文字と、80首の「カタカムナウタヒ」を中心に紹介されている思想体系です。

その由来については、楢崎皐月という人物が1949年に資料を書き写した、という話が伝えられています。

ただし、超古代文明に由来するという説明や、当時の原資料については、歴史学・考古学で確立した事実として扱えるものではありません。

ここは、伝承や提唱者側の説明と、歴史的に確認できたことを分ける必要があります。

カタカムナの内容については、こちらの記事でも紹介しています。

カタカムナとは?不思議な文字と80首のウタヒはどこから来たの?

さて、今回注目したいのは、音です。

カタカムナを解釈する人たちの中には、一つひとつの音に意味があるとする考え方があります。

例えば、吉野信子さんは、「日本語48音の思念」という体系を紹介しています。

音を一つずつ分け、それぞれに意味を与え、組み合わせることで言葉を読み解くという方法です。

吉野さんの説明では、

「カタ」は、見えるもの。

「カム」は、見えないもの。

「ナ」は、それらを結びつける核や本質。

といった意味で説明されています。

ここだけ聞くと、何だか壮大な話ですよね。

一つの言葉の中に、世界の仕組みが込められている。

そんな見方です。

ただし、これらは吉野さんが紹介している独自の解釈体系です。

吉野さんの公式サイトでは、2012年に48音の思念を発見・体系化したと説明されています。

そのため、

「日本語のすべての音には、古代から科学的に確認された固定の意味がある」

という事実として扱うことはできません。

それと、この体系を面白いと思うかどうかは、別の話です。

独自の思想として読み解くことはできます。

音の響きを楽しむこともできます。

一方で、その説明が歴史的・科学的な事実として成立しているかどうかは、別に確かめる必要があります。

参考:吉野信子公式「カタカムナとは」

カタカムナとブーバ・キキは、同じことを言っているの?

さて、ここが今回の大事なところです。

ブーバ・キキ効果では、音から形を感じる傾向が確認されました。

カタカムナの解釈では、音に意味があると説明されています。

では、

「ほら、音象徴があるんだから、カタカムナも科学的に正しい!」

となるのでしょうか。

……そこは、少し違います。

二つを並べてみましょう。

比べるところ音象徴の研究カタカムナの音の解釈
主な問い音と印象にどんな対応があるか音にどんな意味が込められているか
具体例ブーバを丸い形に結びつけやすい「カタ」「カム」などに独自の意味を見いだす
確かめ方実験、参加者の判断、音響分析など提唱者による解読や思想的な解釈
分かること音と感覚の対応傾向や条件その解釈体系がどう意味を組み立てるか
それだけでは分からないこと音に宇宙的な意味があるか古代からその意味が存在したか、科学的効果があるか

音象徴の研究では、

「この音を聞いた人は、どんな形を選びやすいのか」

を調べます。

一方、カタカムナの解釈では、音を宇宙や生命などについての説明に結びつけることがあります。

似ているようで、問いが違いますよね。

例えば、

「ブーバは丸い形に結びつきやすい」

という研究結果があったとします。

そこから、

「だから『ブ』には宇宙の根源を表す特別な意味がある」

という結論は、直接には導けません。

その意味があると考えるなら、その主張自体についての根拠が必要になります。

同じ「音と意味」という話でも、どんな意味について話しているのかが違うんです。

音には振動がある。では、言葉には特別な力がある?

さて、カタカムナや言霊について調べていると、こんな言葉にも出会います。

「音には振動がある」

これは、物理学的な意味では正しい説明です。

私たちが空気中で聞く音は、空気の圧力の変化が伝わる現象です。

音には周波数などの物理的な特徴があります。

測定することもできます。

では、ここから、

「だから、ある言葉を唱えると運気が必ず変わる」

「この音には、病気を治す力がある」

という結論になるのでしょうか。

……いや、そこは別の話ですよね。

音が振動であることと、特定の言葉に特定の効果があることは、同じではありません。

例えば、好きな音楽を聞いて安心することはあるでしょう。

誰かの優しい声を聞いて、落ち着くこともあります。

ある言葉を唱えることで、気持ちが整うと感じる人もいるかもしれません。

そうした体験があったことまで否定する必要はありません。

でも、その体験が、

音そのものの物理的な特徴によるものなのか。

言葉の意味によるものなのか。

過去の経験と結びついているのか。

その場の状況が関係しているのか。

それは、また別の問いです。

そして、医学的な効果などを主張する場合には、その効果についての適切な研究が必要です。

「音は振動です」から「この言葉で何でも解決します」までは、ずいぶん距離があるんです。w

ここを分けておけば、音を楽しみながら、その説明について考えることもできます。

ちょっと実験|知らない言葉に意味を教えたら?

さて、今度は自分たちの中で起きることを考えてみましょう。

ある外国語の言葉を聞いたとします。

例えば、初めて聞く言葉です。

何を意味しているのか分かりません。

さて、誰かが言いました。

「それは『あなたに会えて嬉しい』という意味ですよ」

どうでしょう。

何だか、温かい言葉に感じられるかもしれません。

では、別の人が言いました。

「いや、それは『もう会いたくない』という意味ですよ」

……えっ?

印象が変わりませんか。

ここでは、実際にそんな言葉が存在するという話ではありません。

仮の例です。

でも、面白いことが起きています。

聞いた音は同じなのに、教えられた意味によって、感じ方が変わる場合がある。

ということです。

そして、ここでさらに一つ。

「どちらの翻訳が正しいのでしょう?」

という問いが生まれます。

最初に教えられた方が本当なのか。

あとから教えられた方が本当なのか。

それとも、どちらも間違っているのか。

これは、言葉の使われ方や辞書、母語話者の説明などを確認する必要があります。

つまり、

「温かく感じた」

という自分の体験と、

「その言葉は実際にどういう意味なのか」

という事実は、分けて考えられます。

「カ」という音が、急に特別に感じられたら?

では、カタカムナに戻ってみましょう。

今度は「カ」という音です。

普段、私たちはこの音をいろいろな言葉の中で使っています。

カラス。

カバン。

カメラ。

カレー。

……。

カレー!

お腹がすいてきそうですね。w

さて、ある日、誰かから、

「『カ』という音には、特別な意味があるんですよ」

と教えられたとします。

その説明を聞いて、

「へえ、面白い!」

と思いました。

そして、それから「カ」という音を聞くたびに、その説明を思い出すようになったとします。

どうでしょう。

今まで、特に意識していなかった音が、少し特別に感じられるかもしれません。

では、そのとき何が変わったのでしょう。

「カ」という音そのものが、急に新しい物理的な性質を持ったのでしょうか。

それとも、自分の中で、その音に結びついている知識や意味が変わったのでしょうか。

ここ、なかなか面白いところです。

音を聞いた。

意味を教わった。

その意味を思い出した。

以前とは違う感じが生まれた。

一つずつ分けてみると、いろいろなことが起きています。

これが、そとがわメソッドの観察にもつながります。

そとがわメソッドでは、何を観察するの?

そとがわメソッドでは、出来事と色づけ、そこから生まれる反応などを分けて観察します。

例えば、ある音を聞きました。

「カ」という音です。

そこに、

「これは神聖な意味を持つ音です」

という説明が加わりました。

すると、その音を聞いたとき、何となく安心するようになったとします。

さて、何が起きているのでしょう。

最初に、音を聞きました。

次に、その音に特別な意味があると知りました。

その意味が、自分の中で大切なものになりました。

そして、音を聞いたときに、安心する感覚が生まれました。

こうして考えることができます。

もちろん、安心した理由がすべて意味づけだけだとは限りません。

音の響きが心地よかったのかもしれません。

声に出すと呼吸のリズムが変わるのかもしれません。

過去の経験が関係しているのかもしれません。

でも、少なくとも、

「その音には特別な意味がある」と知ったことが、体験に関わった可能性

を考えることができます。

ここで大切なのは、音を楽しんでいる自分を否定することではありません。

その音に意味を感じる人を否定することでもありません。

ただ、

「自分の中では、何が起きていたのだろう?」

と観察することです。

「この言葉を唱えると安心する」が「唱えないと不安」に変わったら?

さて、ここでもう一つ考えてみましょう。

ある人が、毎朝決まった言葉を唱えているとします。

その言葉を唱えると、心が落ち着きます。

気持ちよく一日を始められます。

本人にとって、大切な習慣です。

それ自体に、何か問題があるとは限りません。

ところが、ある朝。

寝坊してしまいました。

急いで家を出ます。

そして、途中で気づきます。

「あっ! 今日、あの言葉を唱えてない!」

……。

すると、急に不安になったとします。

「今日、何か悪いことが起きるんじゃない?」

さて、ここで何が変わったのでしょう。

最初は、

「唱えると安心する」

という体験でした。

でも今度は、

「唱えないと危険かもしれない」

という予測が生まれています。

これは、同じことでしょうか。

少し違いますよね。

安心できる習慣だったものが、いつの間にか、危険を避けるために必要な行動になっている。

そんなことが起こる場合があります。

ここで、そとがわメソッドでは、こんな問いを向けられます。

なぜ、唱えないことが危険になったのでしょう。

何が起きると予測したのでしょう。

何を避けたかったのでしょう。

何を守ろうとしていたのでしょう。

そこには、防衛反応が関係しているかもしれません。

ただし、この例はカタカムナに限った話ではありません。

どんな習慣でも、同じようなことが起きる可能性があります。

また、ある行動をしないと強い不安が生まれる場合には、さまざまな心理的な要因が関係するため、ここに書いた一つの説明だけで判断できるわけではありません。

今は、安心することと、安心するためにその行動が不可欠だと感じることは、違うというところに注目してみましょう。

ある音を好きになるのに、特別な力は必要?

さて、今度はもう少し楽しい話をしましょう。

好きな音はありますか。

例えば、雨の音。

「しとしと」

「ぽつぽつ」

「ざあざあ」

同じ雨でも、いろいろな音があります。

眠る前に、小さな雨音を聞くのが好きな人もいるでしょう。

反対に、大きな雨音が苦手な人もいるかもしれません。

では、その違いは、何から生まれているのでしょう。

音の大きさ。

周波数。

過去の経験。

雨に対する印象。

その日の気分。

いろいろなことが関係する可能性があります。

そして、雨音を聞いて、

「ああ、落ち着くなあ」

と思うことがあります。

では、その音には、宇宙に共通する「落ち着く意味」が備わっているのでしょうか。

そうとは限りません。

でも、だからといって、その音を好きになる理由がなくなるわけでもありません。

自分にとって心地よいことと、その音に普遍的な意味があることは、同じではないからです。

これは、音楽でも同じように考えられます。

ある曲を聴くと、昔の友人を思い出す。

別の曲を聴くと、旅行に行った日のことを思い出す。

ある言葉を聞くと、大切な人の声が浮かぶ。

そういうことがあるでしょう。

でも、その曲や言葉が、すべての人に同じ思い出を呼び起こすわけではありません。

自分にとって特別であることは、誰にとっても同じ意味であることを必要としないんです。

「科学で説明できる」と「楽しめなくなる」は別

ところで、音象徴について調べていたら、

「科学で説明されると、ロマンがなくなる」

と感じる人もいるかもしれません。

……でも、そうでしょうか。

例えば、ブーバ・キキ効果です。

何も知らずに、

「ブーバは丸い」

と思う。

それも面白いですよね。

でも、研究を読んで、

「えっ! 25言語でも似た傾向があったの!?」

と知る。

これも面白くありませんか。

さらに、

「耳から聞くだけじゃなく、口の動きも関係しているかもしれないの!?」

と知る。

もう一段、面白くなります。

そして、

「言葉を使ってきた経験まで関係しているんだ!」

と知る。

……あれ?

むしろ、どんどん面白くなっていませんか。w

仕組みを知らずに楽しむこともできます。

仕組みを知って楽しむこともできます。

どちらかを選ばなければならないわけではありません。

カタカムナの音の響きを楽しむ人もいるでしょう。

そこに込められているとされる意味を考える人もいるでしょう。

その由来を歴史的に調べたい人もいるでしょう。

研究で確認できることと、独自の思想として語られていることを比べたい人もいるでしょう。

それぞれ、違う関心です。

一つの音について、いろいろな角度から考えられるんですね。

同じ言葉なのに、違う意味が生まれることもある

では、もう少し日常の話に広げてみましょう。

例えば、誰かに、

「頑張ってね」

と言われたとします。

さて、どんな気持ちになりますか。

「ありがとう! 頑張る!」

と思う人もいるでしょう。

「応援してくれて嬉しいな」

と思う人もいるでしょう。

一方、

「もう十分頑張ってるんだけどな……」

と思う人もいるかもしれません。

あるいは、何も特別なことを感じない人もいるでしょう。

同じ言葉です。

でも、反応が違います。

これは、ブーバ・キキの音象徴とは違う話です。

言葉の意味や、これまでの経験、相手との関係、現在の状況などが関係します。

ただ、ここにも面白い問いがあります。

「頑張ってね」という言葉を聞いたとき、自分の中では何が起きていたのでしょう。

応援されたと思ったのでしょうか。

努力が足りないと言われたように感じたのでしょうか。

期待に応えなければと思ったのでしょうか。

それとも、ただの挨拶のように受け取ったのでしょうか。

そして、そう受け取ったことで、どんな反応が生まれたのでしょう。

言葉そのもの。

自分が受け取った意味。

そこから生まれた反応。

それらを分けて考えることができます。

このようにして見ると、普段何気なく交わしている言葉も、ずいぶん面白くなってきます。

「私にはそう感じられた」と「みんなにもそう感じられる」は違う

さて、最初のブーバ・キキに戻りましょう。

あなたは、丸い形をブーバと呼びたいと思ったかもしれません。

それは、実際に自分の中で起きた判断です。

そして、研究でも、同じような判断をする人が多いことが確認されています。

でも、すべての人が必ずそう感じるわけではありません。

では、ここで、

「私はキキの方が丸いと思う」

という人がいたら、どうでしょう。

「あなたの感じ方は間違ってる!」

と言う必要があるでしょうか。

研究によって、どちらを選ぶ人が多いかは調べられます。

でも、個人が実際にどちらを選んだかということは、それとは別です。

そして、どちらを選んだかによって、その人の価値が変わるわけでもありません。

ここで考えられるのは、

「なぜ、この人にはキキの方が丸く感じられたのだろう?」

という問いです。

何か違う音の特徴に注目していたのでしょうか。

過去の言語経験が関係しているのでしょうか。

単に、その人の好みだったのでしょうか。

今の段階では分かりません。

でも、分からないからこそ、知りたいと思うこともできます。

自分と違う答えが出たとき、それは誰かを否定する理由だけではなく、新しい疑問の入口にもなるんです。

「音には意味がある」と感じたとき、何を確かめたい?

さて、ここまでの話を、一度整理してみましょう。

例えば、

「この音には意味がある」

という話を聞きました。

さて、そこにはいろいろな問いが考えられます。

一つ目。

その音を聞くと、人はどんな印象を持ちやすいのでしょう。

これは、音象徴の研究などで調べられることです。

二つ目。

その音は、ある言語の中でどんな意味を持つのでしょう。

これは、その言語の使われ方や歴史などを調べられます。

三つ目。

その音に特別な意味を与える思想体系には、どんな考え方があるのでしょう。

これは、提唱者の説明を読んだり、解釈の違いを調べたりできます。

四つ目。

その特別な意味は、歴史的に存在したことが確認できるのでしょうか。

これは、資料の成立や伝承の経緯などを調べる必要があります。

五つ目。

その音には、特定の効果があるのでしょうか。

それを主張するなら、その効果についての研究が必要になります。

……。

何だか、ずいぶんいろいろな問いが出てきましたね。w

でも、どれも少しずつ違います。

そして、最初からすべての答えを出さなくても構いません。

自分は、今、何について知りたいのでしょう。

どの話が気になったのでしょう。

何を確かめたいのでしょう。

そこが分かるだけでも、考える方向が少しはっきりしてきます。

最初の二匹に、もう一度名前を付けてみましょう

さて、最後にもう一度。

丸くて、ふわふわした生き物。

トゲトゲした生き物。

ブーバ。

キキ。

あなたは、どちらにどちらの名前を付けますか。

最初と同じでしょうか。

それとも、何か変わりましたか。

「やっぱりブーバが丸い!」

と思ったかもしれません。

「口の動きが関係するって聞いたら、何となく理由が分かった気がする」

と思ったかもしれません。

「でも私は、キキの方がかわいい名前に感じるな」

と思ったかもしれません。

それもまた、一つの体験です。

そして、ここでも面白いことが起きています。

最初は、名前を選んだだけでした。

でも今は、その理由をいろいろ考えられます。

音の特徴。

口の動き。

これまでの言語経験。

自分の好み。

そして、音に意味を与えるという人間の働き。

最初は、ただの「ブーバ」と「キキ」だったのに。

気づいたら、人間の言語や認識の仕組みを、ずいぶん遠くまで見に来てしまいました。w

それが、面白いところなんです。

よくある質問

Q. カタカムナの音には、一つひとつ意味があるのですか?

カタカムナの解釈者の中には、一音ごとに意味を割り当てる考え方があります。

例えば、吉野信子さんは「日本語48音の思念」という体系を紹介しています。

ただし、その意味が古代から固定されていたことや、すべての日本語に共通する意味として科学的に確認されているわけではありません。

Q. ブーバ・キキ効果とは何ですか?

架空の言葉「ブーバ」を丸い形に、「キキ」をとがった形に結びつけやすい傾向です。

言葉の音と、視覚的な形の印象の対応を調べる音象徴研究で知られています。

この傾向は、複数の言語や文字体系を比較した研究でも確認されていますが、すべての人が必ず同じ判断をするわけではありません。

Q. 音象徴があるなら、言霊も科学的に証明されたのですか?

いいえ。

音象徴の研究は、音と形、大きさ、感覚的な印象などの間に、どんな対応関係が見られるのかを調べるものです。

特定の言葉に神秘的な力があることや、言葉を唱えることで必ず現実が変わることを証明するものではありません。

Q. 「さらさら」「ざらざら」の感じ方は、生まれつき決まっているのですか?

音と感覚の対応には、人間に広く見られる傾向があります。

一方で、日本語のオノマトペについての研究では、言葉に親しんできた経験が、音と意味の結びつきを強く感じることに関係すると示されています。

そのため、生まれつきの仕組みだけで説明できると決まっているわけではありません。

Q. そとがわメソッドでは、言葉の意味をどう観察するのですか?

まず、どんな言葉を聞いたのかという出来事と、その言葉を自分がどのように受け取ったのかを分けてみます。

さらに、そこにどんな意味や予測が加わり、どんな感情や身体の反応が生まれたのかを観察します。

特に、何かを失う不安や危険の予測が関係しているときは、その反応がなぜ必要になったのかも見ていきます。

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参考文献・資料

  • 吉野信子「カタカムナとは」。吉野信子オフィシャルサイト
  • カタカムナ保存会・潜象物理学会
  • Ćwiek, A., et al.(2021年オンライン公開)“The bouba/kiki effect is robust across cultures and writing systems.” Philosophical Transactions of the Royal Society B. 原著論文
  • 伊東真美(2009)「日本語の擬態語の音象徴について認知言語学的視点から」。CiNii Research
  • Iida, H., & Akita, K.(2024)“Iconicity Emerges From Language Experience: Evidence From Japanese Ideophones and Their English Equivalents.” Cognitive Science. 原著論文
  • Imai, M., et al.(2025)“Does sound symbolism need sound?: The role of articulatory movement in detecting iconicity between sound and meaning.” The Journal of the Acoustical Society of America. PubMed
  • Fort, M., & Schwartz, J.-L.(2022)“Resolving the bouba-kiki effect enigma by rooting iconic sound symbolism in physical properties of round and spiky objects.” Scientific Reports. 原著論文

※音象徴の研究で確認されていることと、カタカムナの歴史的な成立や一音ごとの意味の解釈は、異なる問題です。研究結果が、カタカムナの宇宙論的な主張を直接裏づけるものではありません。

まとめ|音を聞いただけなのに、いろいろなことを感じている

「ブーバ」

「キキ」

何も知らない言葉なのに、丸い形やとがった形を連想することがあります。

そして、こうした音と形の対応は、言語学や心理学で研究されています。

音の響きや、発音するときの口の動き。

これまでに言葉を使ってきた経験。

そうしたものが、音から受け取る印象に関係する可能性があります。

一方、カタカムナでは、一つひとつの音に特別な意味を見いだす解釈が紹介されています。

それは、音象徴と同じことを研究しているわけではありません。

でも、両方を知ることで、

「音に意味がある」

という一言の中にも、いろいろな問いがあることが分かります。

音を聞いた。

形を思い浮かべた。

意味を教わった。

何かを感じた。

その言葉を大切にしたいと思った。

さて、この間で、自分の中では何が起きていたのでしょう。

そこを考えてみると、普段何気なく使っている言葉にも、まだまだ知らない面白さが見つかります。

人間って、音を聞いているだけでも、こんなにいろいろなことをしているんですね。

何だか、いつもの会話まで、少し面白く聞こえてきませんか。

自分の中で意味や反応が生まれる仕組みを、もっと知りたい方へ

そとがわメソッドでは、出来事と色づけ、感情や身体の反応、その後の行動などを分けて観察します。

何かの言葉を聞いた。

その言葉に特別な意味を感じた。

安心した。

不安になった。

何度も確認したくなった。

そうしたことが起きたとき、

「なぜ、自分にはその意味が生まれたのだろう?」

「何を予測していたのだろう?」

「その反応は、なぜ必要だったのだろう?」

と、仕組みを見ていきます。

感じ方を否定するためではありません。

正しい意味を一つに決めるためでもありません。

人間がどのように認識し、なぜその反応を必要としているのかを知るためです。

無料講座では、身近な具体例を使いながら、人間の認識と反応について順番に見ていきます。

悩みを抱えている方だけでなく、人間の仕組みそのものに興味がある方にも、楽しんでいただける内容です。

登録は不要です。

興味があれば、0時間目から自由にご覧ください。

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この記事を書いた人

そとがわメソッド開発者。心理学・自己啓発・潜在意識などを学んでも自己否定が終わらなかった自身の経験から、「自分を変える前に、何が起きているのかを見る」そとがわメソッドを開発。著書『自分を否定しない練習』。
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