過去の失敗を引きずるのはなぜ?今は何も起きていないのに怖くなる仕組み

仕事で新しいことを任された。

説明を聞いて、内容も理解できた。

特に難しい仕事というわけでもない。

それなのに、なぜか不安になる。

「また間違えたらどうしよう」

「前みたいに、うまくできなかったら嫌だな」

「失敗しないように、ちゃんと確認しておこう」

そう考えているうちに、まだ何も始めていないのに緊張してしまう。

以前、似たような仕事で失敗したことがあった。

そのときのことを思い出しているのかもしれません。

でも、ちょっと不思議ではないでしょうか。

今回の仕事では、まだ何も失敗していないのに、なぜもう怖くなっているのでしょう。

過去の失敗を思い出したことで、今の仕事の何が変わったのでしょうか。

今回は、過去の失敗を忘れる方法ではなく、過去の経験が今の反応につながる仕組みを考えてみます。

目次

過去の経験は、今の判断材料になる

人間は、これまでの経験を参考にしながら行動しています。

たとえば、以前、熱い鍋に触れて手を引っ込めたことがあれば、次からは気をつけるでしょう。

一度通った道を覚えていれば、次に通るときは迷いにくくなります。

以前うまくいかなかった方法を覚えていれば、別のやり方を選ぶこともできます。

過去の経験を今に生かすことは、人間の大切な働きの一つです。

失敗から学ぶこと自体が問題なのではありません。

ただ、ここで少し違うことが起きる場合があります。

過去に一度うまくいかなかった。

その経験をもとに、次も同じようになると予測する。

そして、まだ何も起きていないのに、失敗することが決まっているように感じられる。

過去の経験が判断材料になることと、過去と同じことが今も起きると感じることは、同じではありません。

「前も失敗した」が「今回も失敗する」に変わるとき

たとえば、以前、会議で発言したときのことです。

自分の考えを説明している途中で、言葉が出なくなってしまった。

そのとき、誰かに「もう少し整理してから話して」と言われた。

後になって、

「うまく説明できなかった」

「みんなに変だと思われたかもしれない」

と考えたかもしれません。

そして、次の会議で発言する場面が来た。

まだ何も話していません。

誰からも何も言われていません。

でも、

「また言葉が出なくなるかもしれない」

「また指摘されるかもしれない」

と考える。

そうすると、心臓が速くなったり、喉が詰まるように感じたりすることがあります。

結果として、発言を控えるかもしれません。

ここで起きたことを分けてみると、少し違ったものが見えてきます。

以前の会議で言葉が止まったことは、過去に起きた出来事です。

今回の会議で言葉が止まるかどうかは、まだ分かりません。

でも、自分の中では、過去の経験から未来を予測しています。

そして、その予測に今の身体や感情が反応している場合があります。

つまり、今回の会議で失敗したから怖いのではありません。

失敗するかもしれないという未来が、すでに今の自分にとっての問題になっているのです。

昔と今は違うと分かっているのに、なぜ反応する?

ここで、こんな疑問が出てくるかもしれません。

「昔と今は違うって、頭では分かっているんだけど」

そうなんです。

前回と今回では、仕事の内容が違うかもしれません。

相手も違うかもしれません。

自分の経験や能力も、以前と同じとは限りません。

それを理解していても、似た場面になると反応が出てくることがあります。

なぜでしょう。

人間の反応は、いつも意識的に考えてから始まるとは限らないからです。

過去に経験したことと似た状況を見たとき、これまでの学習や予測に基づいて、身体や感情が反応する場合があります。

その反応が出たあとに、

「また怖くなっている」

「やっぱり私は人前で話すのが苦手なんだ」

と考えることもあるでしょう。

ここで注目したいのは、知識として理解していることと、実際の場面で何を経験しているかが違うことです。

「今回は大丈夫なはず」と考えていても、その場では「また同じことが起きるかもしれない」という現実を経験している場合があります。

頭ではわかっているのにできないのはなぜ?「意志が弱い」では説明できない理由でも、知識と実際の反応が一致しないことについて扱っています。

思い出しているのは、出来事だけだろうか?

ここで、自分の経験を一つ思い出してみてください。

以前の失敗が気になって、何かをためらったことはありませんか。

そのとき、何を思い出していたでしょう。

実際に起きた出来事でしょうか。

それとも、その出来事について自分が考えたことも含まれていたでしょうか。

たとえば、

「発表の途中で言葉が止まった」

という出来事があったとします。

そこから、

「私は発表が苦手だ」

「また失敗する」

「失敗したら恥ずかしい」

という考えが生まれたのかもしれません。

でも、これらはすべて同じものではありません。

言葉が止まったこと。

自分が苦手だと判断したこと。

次も失敗すると予測したこと。

失敗することを恥ずかしいと感じたこと。

一つひとつ分けてみると、過去の出来事だけでなく、そこについた意味や未来の予測まで含まれていることが分かります。

今、怖いと感じているのは、過去に起きたことそのものでしょうか。それとも、これから起きると思っていることでしょうか。

この問いは、過去を否定するためのものではありません。

自分の中で、何が今の問題になっているのかを見るためのものです。

失敗を避ける行動が、必要になっていく

過去の経験から、また同じことが起きるかもしれないと感じた。

そうすると、その結果を避けるための行動が必要になることがあります。

できるだけ発言しない。

何度も確認する。

新しいことに挑戦しない。

誰かに任せて、自分は引き受けない。

こうした行動が、必ず問題だというわけではありません。

実際に危険を避けるために必要な場合もあります。

ただ、まだ何も起きていない段階で、その行動が必要不可欠に感じられることがあります。

たとえば、

「話さなければ、変なことを言わずに済む」

と考えて会議で発言しなかったとします。

すると、実際に人前で言葉が止まることは起きません。

その場を無事に終えられて、安心するかもしれません。

そして次の会議でも、

「やっぱり発言しない方が安全だ」

と思う可能性があります。

発言を控えることで安心できた経験が、次に発言を控える理由になることもあるのです。

一方で、実際には話せたかもしれないという可能性は、試されないままになります。

こうして過去の経験から始まった予測が、その後の行動にも影響していくことがあります。

過去の失敗を忘れれば、解決するのだろうか

過去の失敗を引きずっていると、

「もう忘れよう」

「過去は変えられないんだから、前を向こう」

「気にしないようにしよう」

と考えることがあります。

こうした方法で気持ちが切り替わるなら、それを使っても構いません。

ただ、それでも似た場面になると同じ反応が出ることがあります。

そのとき、

「まだ過去にとらわれている」

「もう克服したはずなのに」

「いつまで引きずっているんだろう」

と、自分を責めてしまう場合もあります。

すると、今度は過去の失敗だけでなく、過去を引きずっている自分まで問題になります。

失敗を思い出して不安になった。

さらに、不安になっている自分を見て落ち込んだ。

最初の反応に、もう一つ判断が加わっているのかもしれません。

ここで、過去を忘れられないことまで、新しい失敗にする必要はありません。

そとがわメソッドでは、こうした反応した自分への判断も、分けて見ていきます。

今の自分は、本当に昔と同じ状況にいる?

たとえば、昔、学校で発言したときに笑われた経験があったとします。

大人になって、職場で意見を聞かれた。

そのとき、学校での経験が思い浮かび、発言するのが怖くなった。

ここで少し考えてみます。

学校で笑われたことと、職場で意見を聞かれたことは、同じ出来事でしょうか。

もちろん、似ている部分はあります。

人前で話すという点では共通しています。

でも、相手は違います。

場所も違います。

話す内容も、自分の立場も違うでしょう。

それでも、過去の経験によって、

「人前で話すと嫌なことが起きる」

という意味が強く結びついていたなら、今も似た反応が出るかもしれません。

ここで大切なのは、

「今は絶対に安全だから、怖がる必要はない」

と決めつけないことです。

実際に否定されたり、不当に扱われたりする状況もあります。

その場合は、周囲の環境や相手の行動について、現実的な対応を考える必要があります。

ただ、過去の経験から作られた予測と、今実際に起きていることは、分けて確認できます。

そうすると、今の状況を見るための情報が増えます。

「また失敗する」は、いつ現実になったのか?

ここで、最初の仕事の場面に戻ってみましょう。

新しい仕事を任された。

内容を説明された。

以前の失敗を思い出した。

「また失敗するかもしれない」と思った。

怖くなった。

何度も確認する必要を感じた。

こうして並べてみると、仕事を任されたことと、失敗すると予測したことは別だと分かります。

でも、実際の場面ではどうでしょう。

自分では、意味や予測を加えているつもりはなかったかもしれません。

「私はまた失敗すると考えた」

というより、

「また失敗しそうだから怖い」

という一つの現実として経験していたのではないでしょうか。

そとがわメソッドが注目しているのは、まさにこの部分です。

人は、出来事を受け取ったあとに、それまでの経験や学習などをもとに意味づけし、予測し、反応することがあります。

でも、その処理の途中がいつも意識されるわけではありません。

だから、予測によって出来上がったものが、最初からそこにあった現実のように感じられることがあります。

過去の経験があっても、今の選択は一つとは限らない

過去に失敗したことがある。

だから、次も慎重になる。

それは自然なことかもしれません。

その経験を参考にして、準備を増やす選択もあります。

今回は別のやり方を試すこともできます。

誰かに確認してから進めてもいいでしょう。

本当に危険があるなら、避けることもできます。

大切なのは、過去に失敗した自分を消すことではありません。

過去の出来事。

そこから作られた意味。

今の状況についての予測。

そして、その予測に対する自分の反応。

これらが分かれて見えることで、今の状況をもう一度確かめる余地が生まれます。

過去の経験を参考にすることも、その予測を採用しないことも、そのときの状況に合わせて選べます。

過去の失敗が今に影響する仕組みを知りたい方へ

「昔のことなのに、まだ反応してしまう」

「今は違うと分かっているのに、怖くなる」

そんなとき、必要なのは新しい考え方を一つ覚えることだけとは限りません。

目の前で何が起きて、そこに過去のどんな経験が結びつき、何を予測し、どんな反応が生まれたのか。

その一連の仕組みを知ることもできます。

そとがわメソッドの無料講座では、出来事と意味づけ、予測、感情や身体の反応を分けながら、人間が現実を経験する仕組みを説明しています。

よくある質問

Q. 過去の失敗を引きずるのは、気持ちの切り替えが下手だからですか?

必ずしもそうではありません。

過去の経験は、今の予測や反応に影響する場合があります。

ただ、反応の強さや続き方には個人差があり、すべてを一つの原因で説明することはできません。

Q. 過去の失敗は忘れた方がいいのでしょうか?

忘れる必要があるとは限りません。

失敗した経験が、次の判断に役立つ場合もあります。

大切なのは、過去に起きたことと、今起きていること、これから起きると予測していることを、同じものとして扱わなくてもよいという点です。

Q. 昔と今は違うと分かっていても、身体が反応するのはなぜですか?

身体や感情の反応は、意識して考えるより先に起きる場合があります。

そのため、頭では理解していても、似た状況になると緊張や不安が生まれることがあります。

ただし、強い身体症状や生活に支障がある場合には、医療・心理の専門家に相談することも選択肢です。

Q. 過去に実際につらい経験があった場合も、意味づけの問題なのでしょうか?

実際に起きた不当な扱いや危険な出来事を、単なる意味づけとして片づけることはできません。

そとがわメソッドでは、現実に起きたことと、そのあと自分の中で生まれた予測や反応を分けて考えます。

必要な安全確保や現実的な対応を否定するものではありません。

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まずは無料講座から

過去の失敗を思い出した。

「また同じことが起きるかもしれない」と思った。

身体が緊張した。

失敗しないための行動が必要になった。

その一連の流れは、普段、一つの現実として経験されることがあります。

だからこそ、何が起きていたのかを分けて見ることには意味があります。

そとがわメソッドは、過去を忘れるための方法でも、怖がらない人になるための方法でもありません。

今、自分の中でどんな仕組みが働いているのかを知り、その反応を見たうえで選べる余地を見つけるものです。

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この記事を書いた人

そとがわメソッド開発者。心理学・自己啓発・潜在意識などを学んでも自己否定が終わらなかった自身の経験から、「自分を変える前に、何が起きているのかを見る」そとがわメソッドを開発。著書『自分を否定しない練習』。
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