ポジティブに考えても、また苦しくなるのはなぜ?前向きになっても戻ってしまう仕組み

仕事で、上司から「ここ、違います」と言われた。

最初は少し落ち込んだ。

でも、以前学んだことを思い出した。

「指摘されたからといって、自分の全部が否定されたわけじゃない」

「改善できるところが分かったんだから、いい機会だよね」

そう考えると、少し気持ちが楽になった。

前なら何時間も落ち込んでいたかもしれない。

でも今回は、考え方を変えることができた。

「私も少し変わってきたのかな」

そう思っていた。

ところが数日後、別の場面でまた落ち込んでしまった。

今度はなかなか前向きになれない。

すると、

「せっかく学んだのに、また戻ってしまった」

「どうして私は、いつまでたっても変われないんだろう」

と考えてしまう。

こんな経験はありませんか。

ポジティブに考えれば、実際に楽になることもある。

それなのに、また苦しくなる。

考え方を変えて楽になったことは、本当に無駄だったのでしょうか。

それとも、楽になったあとに、私たちは何か別のものを必要にしているのでしょうか。

目次

ポジティブ思考で楽になることはある

物事には、さまざまな捉え方があります。

たとえば、仕事でミスをしたとします。

「失敗した。私は仕事ができない」

と考えることもあれば、

「今回は間違えたけれど、次から気をつけられる」

と考えることもできます。

どちらの考え方を採用するかによって、感情や次の行動が変わる場合があります。

心理学では、出来事の解釈を見直すことを、認知的再評価などの観点から説明することがあります。

新しい捉え方によって気持ちが軽くなることもあります。

それは、実際に役立つ方法です。

そとがわメソッドでも、そうした方法を否定しません。

ただ、一つ考えてみたいことがあります。

考え方を変えて楽になったことと、苦しさが生まれる仕組みを知ったことは、同じでしょうか。

この違いを考えてみると、何度もポジティブに考え直しているのに、また苦しくなる理由が少し違って見えてきます。

同じ出来事でも、捉え方によって経験が変わる

たとえば、友達にメッセージを送りました。

しばらく待っても返信がありません。

ここで確認できるのは、まだ返信が来ていないということです。

でも、自分の中では、

「何か気に障ることを言ったかな」

「嫌われたのかもしれない」

という考えが生まれるかもしれません。

すると、不安になることがあります。

そこで、

「相手も忙しいのかもしれない」

と考え直した。

少し安心した。

こうした経験は、特に珍しいものではありません。

最初の「嫌われたかもしれない」という予測が、「忙しいのかもしれない」という予測に変わったことで、感じ方が変化したのかもしれません。

ただ、ここで一つ注目したいことがあります。

実際には、まだ返信が来ていません。

相手が忙しいのかどうかも、まだ分かりません。

嫌われたのかどうかも、まだ分かりません。

どちらも、現時点では可能性の一つです。

それなのに、一方を考えると不安になり、もう一方を考えると安心できる場合があります。

では、自分が経験していた不安や安心は、どこから生まれていたのでしょうか。

返信がないという出来事そのものだけでなく、そこから自分が予測したことが関係していた可能性があります。

ここに、人間が現実を経験する仕組みの一部が見えてきます。

ポジティブな解釈も、一つの解釈である

「嫌われたのかもしれない」

「忙しいのかもしれない」

この二つは、どちらもまだ確定していないことです。

一方がネガティブで、もう一方がポジティブだったとしても、どちらかが必ず事実になるわけではありません。

でも、普段はどうでしょう。

嫌われたと思っているときには、嫌われたことが現実のように感じられる。

忙しいだけだと思えるときには、それが現実のように感じられる。

私たちは、自分が加えた意味や予測を、いつも「これは私の解釈です」と認識しているわけではありません。

その解釈を通して、実際に不安になったり、安心したりします。

だから、ポジティブな考え方によって楽になることがあります。

ただ、それは必ずしも、正しい現実を見つけたという意味ではありません。

別の見方を採用したことで、自分の経験が変わったのかもしれません。

ここで重要なのは、ネガティブな考えを否定することでも、ポジティブな考えが間違っていると判断することでもありません。

どちらの考え方も、出来事に対する自分の受け取り方として見ることができるということです。

出来事より「意味づけ」が苦しさを大きくするとはどういうこと?では、この出来事と意味づけの関係をさらに詳しく扱っています。

前向きになれた自分が、新しい基準になることがある

ここで、最初の仕事の場面に戻ってみましょう。

上司から指摘を受けた。

一度は落ち込んだけれど、前向きに捉え直せた。

「私は変われてきた」

そう感じた。

その経験は、嬉しいものだったかもしれません。

でも、そこから、

「これからは、同じことがあっても前向きでいられるはず」

と思うようになったらどうでしょう。

次に何かを指摘されて落ち込んだとき、

「前はできたのに」

「今回はうまく切り替えられなかった」

と考えるかもしれません。

さらに、

「やっぱり私は変われていない」

と思うこともあります。

ここでは、前向きに考えることが、自分の成長を確かめる基準になっている可能性があります。

最初は楽になるために使っていた方法だった。

ところが、いつの間にか、正しく使える自分になる必要が生まれていた。

そして、落ち込んだことだけでなく、前向きになれない自分まで問題になっていく。

これは、単にポジティブ思考がうまくいかなかったという話ではありません。

ポジティブになれたかどうかで、自分を評価する仕組みが加わっていたのかもしれません。

「前向きにならなきゃ」が苦しさを増やすとき

落ち込んでいるとき、

「こんなときこそ、ポジティブに考えなきゃ」

と思うことがあります。

そう考えることで、気持ちを切り替えられる場合もあるでしょう。

でも、うまく切り替えられなかったらどうでしょう。

最初は、仕事で指摘されたことに落ち込んでいた。

そこに、

「前向きに考えられない」

という問題が加わる。

さらに、

「これだけ学んでいるのに、まだできない」

という問題も加わる。

仕事の指摘という最初の出来事は、一つだけです。

ところが、自分の中では、いくつもの問題が出来上がっているかもしれません。

「落ち込んでいる」

「前向きになれない」

「学んでも変われていない」

こうして、最初の感情に自分への判断が重なることがあります。

そして、自分を変える必要がさらに強くなる。

楽になるために学んだはずなのに、いつの間にか、前向きになれない自分を何とかするために、また学ぶ必要が生まれているのです。

ここで見たいのは、ポジティブな考え方を使ったことが悪かったのかどうかではありません。

前向きでいなければならないという必要性が、どこで生まれたのかということです。

楽になったあと、また苦しくなるのは後戻りなのだろうか

少し考えてみてください。

昨日は、ある出来事を前向きに考えられた。

今日は、別の出来事で落ち込んだ。

この二つがあったとき、

「また元に戻った」

と思うことがあります。

でも、本当に元に戻ったのでしょうか。

昨日と今日では、起きた出来事が違います。

相手も、状況も、自分の体調も違うかもしれません。

それなのに、「昨日はできたのに、今日はできない」という基準で自分を評価することがあります。

そして、今日落ち込んだことを、成長が失われた証拠として扱う。

でも、昨日楽になった経験まで、なくなったわけではありません。

今日、落ち込む反応が生まれたという出来事が新しく起きただけかもしれません。

ここで、あなた自身の経験を思い出してみてください。

最近「また元に戻った」と思ったとき、実際に何が元に戻ったのでしょう。

以前と同じ感情が出たこと。

似た行動をしたこと。

それとも、「成長している自分」でいられなかったと判断したこと。

これらは、同じとは限りません。

「今の自分は足りない」という前提が残っている場合

もう一つ、別の角度から考えてみます。

「もっと前向きになりたい」

と思っていたとします。

それは、自分の生活を楽しみたいという希望かもしれません。

ただ、場合によっては、その願いの奥に、

「今の私はネガティブだからダメだ」

という判断があるかもしれません。

そうすると、前向きに考えられた日は合格。

落ち込んだ日は不合格。

楽になったとしても、次に落ち込めば、また自分を改善する必要が生まれます。

ここでは、苦しさを感じるたびに、

「今の自分には、まだ何かが足りない」

という評価が繰り返されている可能性があります。

では、ポジティブな考え方を身につければ、本当にその評価は終わるのでしょうか。

もちろん、前向きに考えられることで、生活が楽になる場合はあります。

ただ、「落ち込む自分はダメだ」という判断を持ったままなら、次に落ち込んだとき、また同じ評価が始まるかもしれません。

そとがわメソッドでは、ここに注目します。

ポジティブな考え方を増やす前に、そもそもどうして今の自分を不足だと経験しているのか。

その判断が生まれる仕組みを見るのです。

「前向きになれない私」を問題にする必要はある?

たとえば、今日は気分が落ち込んでいたとします。

そこに、

「落ち込んでいる自分はよくない」

という判断が加わった。

そして、前向きになる必要が生まれた。

さらに、前向きになれなかったことで、

「自分はまだ変われていない」

という判断も生まれた。

こうして見ると、落ち込んだという最初の反応と、その反応をした自分への評価は別のものです。

では、ここで何をしなければならないのでしょう。

必ず前向きになる必要があるでしょうか。

自分への評価をすぐに消す必要があるでしょうか。

もしかすると、何かを変える前に、今の自分の中で何が起きているのかを見られるかもしれません。

落ち込んでいる。

それをよくないことだと判断している。

前向きになる必要を感じている。

前向きになれない自分を、さらに評価している。

そうした反応が起きていることを、知ることはできます。

そのうえで、気分を切り替える方法を使っても構いません。

休むこともできます。

実際に困っている問題への対応を考えることもできます。

必ずしも、感情を変えてからでなければ行動できないわけではありません。

学ぶほど自分を責めてしまうのはなぜ?知識が増えるほど苦しくなるときでは、学んだこと自体が自分への評価基準になる場合を扱っています。

ネガティブもポジティブも、どちらかを正解にしなくていい

ポジティブに考えたいときは、そう考えてもいい。

落ち込むときは、落ち込むこともある。

そのとき、どうしたいかを考えることもできます。

大切なのは、いつでも前向きであることを、新しい正解にしないことです。

ネガティブな気持ちがあるからといって、必ず間違っているわけではありません。

反対に、ポジティブな気持ちがあるからといって、現実の問題がすべてなくなったわけでもありません。

仕事で修正が必要なら、修正できます。

相手の行動に問題があるなら、対応を考えることもできます。

気持ちを切り替えたいなら、自分に合う方法を使うこともできます。

ただ、その前に、

「私は今、どういう現実を経験しているのだろう」

と見てみる余地があります。

自分の中で加わった意味を、必ず正しいものとして扱う必要はありません。

別の見方を採用することもできます。

そのままにしておくこともできます。

こうした選択の余地があることと、常に前向きでいられることは、同じではないのです。

ポジティブに考えても戻ってしまう仕組みを知りたい方へ

前向きに考える方法を知っている。

実際に、気持ちが楽になったこともある。

それでも、また落ち込む。

そのとき、

「やっぱり変われていない」

と思っているなら、そこにも自分への判断が加わっているかもしれません。

そとがわメソッドの無料講座では、出来事と意味づけ、予測、感情や身体の反応、さらにその反応をした自分への判断を分けて、人間が現実を経験する仕組みを説明しています。

ポジティブな考え方をもう一つ増やすためではなく、自分の中で何が起きているのかを知る入口としてご覧ください。

よくある質問

Q. ポジティブ思考は意味がないのでしょうか?

いいえ。物事の捉え方を変えることで、気持ちが楽になったり、行動しやすくなったりする場合があります。

この記事では、ポジティブ思考の効果を否定していません。

ただ、前向きに考えられるかどうかを自分の価値や成長の基準にしていると、別の苦しさが生まれる場合があることを扱っています。

Q. ネガティブなことを考えていても、そのままでいいのでしょうか?

考え方を無理に変える必要がない場面もあれば、考え直すことが役立つ場面もあります。

また、現実に危険や問題があるなら、対応が必要です。

大切なのは、ネガティブな考えが生まれたことと、その考えが唯一の現実であることを分けられるという点です。

Q. 前向きになれないのは、自己肯定感が低いからですか?

自己肯定感が関係する場合もありますが、それだけで決まるとは限りません。

出来事の内容や状況、過去の経験、疲労なども関係する場合があります。

また、前向きになれないことと、自分の価値が低いことは同じではありません。

Q. 考え方を変えても苦しい状態が続く場合は、どうすればいいですか?

考え方を見直す以外にも、休息、生活環境の調整、周囲への相談などが必要な場合があります。

気分の落ち込みが強く続いたり、日常生活に支障が出たりしている場合は、医療・心理の専門家に相談することも選択肢です。

すべてを考え方だけで解決しなければならないわけではありません。

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まずは無料講座から

ポジティブに考えられた。

でも、また落ち込んだ。

そして、「やっぱり私は変われていない」と感じた。

一続きの経験に思えても、実際には別々のことが起きているかもしれません。

目の前の出来事。

そこに加わった意味や予測。

その結果として生まれた感情。

さらに、その感情を持った自分への評価。

そとがわメソッドでは、それらを分けて、人間が現実を経験する仕組みを見ていきます。

ポジティブでいられる人になるためでも、ネガティブな自分をなくすためでもありません。

自分の中で何が起きているのかを知り、そこから選べる余地を見つけるための入口です。

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この記事を書いた人

そとがわメソッド開発者。心理学・自己啓発・潜在意識などを学んでも自己否定が終わらなかった自身の経験から、「自分を変える前に、何が起きているのかを見る」そとがわメソッドを開発。著書『自分を否定しない練習』。
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