環境が変わると自分が変わった気がするのはなぜ?|性格ラベルと反応の条件

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職場では無口、友達といるとおしゃべり。それは別人?

「あなたって、おとなしい人だよね」。職場でそう言われた人が、休日には友達と大笑いしている。これを見たら、「本当の性格はどっち?」と聞きたくなるかもしれません。

けれど、人は場面によって振る舞いが変わります。だから、どちらか一方が偽物だと決める必要はありません。同じ人でも、環境が変われば、その場で必要だと感じる行動や表に出る反応が違ってくる。まずはそこを比べてみましょう。

「性格が変わった」と感じることはあります。ただ、何が変わったのかを分けると、意外にたくさんの違いが見えてきます。

同じ人が、違う場所に立っているだけで

次の三つの場面を想像してください。

・職場:上司が話している間、間違ったことを言わないように黙って聞く。

・友達と食事:冗談を言って、話題を次々に広げる。

・初めての集まり:周囲の様子がわからず、少し離れて様子を見る。

三人の別人のようですが、全部ひとりの行動だとしても矛盾ではありません。職場には評価や役割があり、友達とは信頼の蓄積があり、初対面では情報が少ない。それぞれの条件が違います。

反応の違いは「本当の自分が出た」「仮面をかぶった」の二択では説明しきれません。どんな条件で、どんな振る舞いが生じているかという見方もできます。

性格に傾向があることと、場面で振る舞いが変わることは矛盾しない

ここで気になるのが、「場面ごとにこんなに違うなら、性格というものはないの?」という疑問です。

たとえば、普段は静かに過ごすことが多い人でも、好きな話題になれば何時間も話すことがあるでしょう。反対に、いつもはよく話す人が、知らない人ばかりの集まりでは様子を見ていることもあります。では、その人の性格は毎回入れ替わっているのでしょうか。

心理学者のMischel(ミシェル)とShoda(ショウダ)は1995年に、比較的安定した個人の特徴と、状況による行動の違いを一緒に説明する理論を提案しました。ある状況ではこう反応し、別の状況では違う反応をする。その「もし、この状況なら、こう反応しやすい」という条件つきのパターンにも、個人に特徴的な一貫性があるという考え方です。Mischel・Shoda(1995)。

2001年にはFleeson(フリーソン)が、日常生活の行動を2〜3週間にわたり繰り返し調べた三つの研究を報告しています。一人の中でも外向性などに関わる行動は大きく変動する一方で、その人の行動を全体として見た平均的な傾向には安定性が見られました。Fleeson(2001)。

つまり、「普段はおとなしい」という傾向があることと、「友達の前ではよくしゃべる」という事実は、両方あってもおかしくないのです。ここで研究が示すのは、特定の環境に移れば必ず性格が変わるということではありません。そのとき表れた行動と、比較的長く続く性格の傾向を、同じものとして扱わなくてもよいということです。

ラベルがつくと、次の場面もラベル越しに見える

職場で「無口な人」と呼ばれていると、たまに冗談を言っただけで「意外!」と驚かれるかもしれません。反対に「明るい人」と思われていると、疲れて静かな日には「機嫌が悪いの?」と聞かれることもあります。

観察した行動は、確かにその場で起きたことです。でも「無口」「明るい」「機嫌が悪い」は、それをまとめたり説明したりする言葉です。ラベルは便利ですが、次に見るものの意味づけにも影響し得ます。

さらに、相手から繰り返し「あなたはおとなしい」と言われると、自分でも「私はそういう人」と考える場合があるでしょう。とはいえ、そのような相互作用が誰にでも必ず起こると断定するものではありません。

実は、相手がこちらをどう見ているかによって、相手の接し方そのものが変わり、こちらの振る舞いも影響を受けることがあります。

Snyder(スナイダー)とSwann(スワン)が1978年に発表した実験では、対話相手を「敵対的な人だろう」と予想していた人と接した参加者は、「敵対的ではないだろう」と予想していた人と接した参加者より、敵対的な振る舞いを示しました。しかも、その後の別の相手とのやり取りにも違いが残ったのは、最初の場面での自分の振る舞いを「自分自身の性質の表れだ」と受け取った場合でした。Snyder・Swann(1978)。

最初の予想が相手への接し方に入り込み、相手の反応を変える。そして場合によっては、その反応を本人が「自分はこういう人だ」と受け取る。相手の思い込みと自分の自己認識が、やり取りの中でつながるというのが面白いところです。

もちろん、これは特定の条件で行われた実験で、「おとなしい人」と呼ばれた人が必ずおとなしくなるという意味ではありません。それでも、人間関係を一人分の性格だけで説明できない理由を考えるヒントになります。

人の内側の自己像については、自己イメージが作られる仕組みで詳しく掘り下げています。この記事で注目したいのは、ラベルと周りの条件との行き来です。

「いい子」でいる必要があった場所から離れたら

例えば、家庭で何か意見を言うと強く叱られることが多かった人が、対話を歓迎する環境では意見を言えるようになることがあります。条件が異なるのです。

これは変化が起きる一つの可能性を示す例で、すべての人に当てはまる原因説明ではありません。

反対に、環境が変わっても以前の緊張が残ることもあります。過去の経験、今の安全、体調、相手との関係など、複数の条件が関わり得ます。

「本来の自分に戻った」と表現する人もいれば、「新しい自分になった」と感じる人もいるでしょう。その感覚自体を否定する必要はありません。

ただ、どちらの言葉を使っても、行動が変わったという観察と、その意味づけは別にできるのです。

行動が必要になった背景については、「いい子」でいることがやめられないのはなぜ?でも考えています。

環境の問題まで自分の認識だけのせいにしない

ここは大切な区別です。職場で萎縮しているからといって、必ず本人の「思い込み」が原因とは言えません。実際に怒鳴る人がいる、侮辱がある、危険があるといった状況なら、外側に対処が必要な問題があります。

「自分の受け取り方を変えればいい」という一言では、環境の実害は解決しません。安心して話せる環境づくりや、第三者への相談、距離を取る判断などが必要になることもあります。

一方で、同じ環境でも人によって違う反応が起きることもあるでしょう。それを「弱いから」「器が小さいから」と評価する前に、出来事、予測、反応、必要な行動を区別してみる余地があります。

変わったのは「私」なのか、「条件」なのか

問いを少し変えます。「私はどんな性格か」ではなく、「この場面で、何が起きると私はこう振る舞うのか」。

例えば、普段は断れないと言っていた人が、親しい相手からの無理なお願いなら即答で断れたとしましょう。そのとき「断れない性格」という説明だけでなく、何を断るのか、誰に断るのか、断ったあと何が起こると予測したのか、と見られます。

そとがわメソッドの言葉では、出来事の受け取り方、一次反応、さらに「こんな自分はダメだ」という二次反応を分けて眺めます。その位置を「観察点」と呼びます。行動を矯正することより、現実を経験する仕組み自体を知ることがテーマです。

人は生活の中で常に変化します。環境が変わったときの変化も、その一部です。どんな自分が「本当」かを急いで決めなくても、観察できることはたくさんあります。

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参考研究

  • Mischel, W., & Shoda, Y. (1995). A cognitive-affective system theory of personality: Reconceptualizing situations, dispositions, dynamics, and invariance in personality structure. Psychological Review, 102(2), 246–268. DOI。状況による行動の変動と個人の特徴を説明する理論論文。
  • Fleeson, W. (2001). Toward a structure- and process-integrated view of personality: Traits as density distributions of states. Journal of Personality and Social Psychology, 80(6), 1011–1027. DOI。日常生活における行動状態の個人内変動を調べた研究。
  • Snyder, M., & Swann, W. B., Jr. (1978). Behavioral confirmation in social interaction: From social perception to social reality. Journal of Experimental Social Psychology, 14(2), 148–162. DOI。相手への予想と対人相互作用が行動に与える影響を調べた実験。

よくある質問

場所によって態度が違うのは二面性ですか?

そう判断する前に、場面の役割や関係、安全性などの条件を比べられます。態度の違いだけで人格を断定することはできません。

「本当の自分」はどの環境にいる自分ですか?

どの場面を本当と呼ぶかは価値観にもよります。少なくとも、場面で表れ方が違うことはどれかが偽物である証拠にはなりません。

環境を変えれば必ず楽になりますか?

保証はできません。負担が減る場合も、慣れるまで大変な場合もあります。安全や実害の問題があるなら、適切な支援と具体的な対応を検討してください。

性格ラベルを使わないほうがいいですか?

ラベルは説明やコミュニケーションに役立ちます。使うこと自体が悪いのではなく、ひとつのラベルがその人のすべてだと決めつけると見落としが起こり得る、という話です。

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この記事を書いた人

そとがわメソッド開発者。心理学・自己啓発・潜在意識などを学んでも自己否定が終わらなかった自身の経験から、「自分を変える前に、何が起きているのかを見る」そとがわメソッドを開発。著書『自分を否定しない練習』。
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