お気に入りのパワーストーンを身につけると、なんとなく安心する。
大切な予定がある日には、いつものブレスレットをつけて出かけたい。
ところが、ある日それを忘れたと気づくと、急に落ち着かなくなることもあります。
同じ石なのに、持っていると安心し、持っていないと不安になる。
ここで一つ、考えてみたいことがあります。
私たちは、その石について何を知っていて、何を感じているのでしょうか。
この記事で考えるのは、パワーストーンそのものにどんな効果があるかという話ではありません。
石を持つ人間の中で、どんな認識や反応が起きているのかという、別の話です。
同じ石でも、持っているときと忘れたときで気持ちが変わる
例えば、大事な面接を控えているとします。
お気に入りのパワーストーンを身につけていると、
「これがあるから、きっと大丈夫」
と感じるかもしれません。
少し緊張していても、いつもより安心して面接に向かえる。
ところが、家を出てから石を忘れたことに気づいたらどうでしょう。
「今日はうまくいかないかもしれない」
「何か悪いことが起きるのでは?」
そんな考えが浮かぶかもしれません。
ここで起きていることを分けてみます。
出来事: パワーストーンを家に置いてきた。
そこに加わった意味: 石がないと、うまくいかないかもしれない。
生まれる予測: 今日の面接で失敗するかもしれない。
起きる反応: 不安になる。石を取りに戻りたくなる。
実際に面接で何が起きるかは、まだ分かりません。
それでも、石を忘れたという出来事に意味が加わることで、すでに気持ちや行動が変化しているのです。
石そのものの効果と、人間の心理的な反応は別の話
パワーストーンについては、さまざまな意味や効果が語られています。
それを楽しんだり、大切にしたりすることもあるでしょう。
ここで分けて考えたいのは、次の二つです。
一つは、石そのものが何らかの作用を持つのかという問い。
もう一つは、その石に対する期待や意味づけが、人間の気持ちや行動にどう関わるのかという問い。
後者を説明できたとしても、前者について自動的に結論が出るわけではありません。
「安心できるのは心理的な理由もある」と分かったからといって、石を大切にしていることの意味が失われるわけでもないのです。
幸運のお守りと心理的な反応を調べた研究がある
心理学では、幸運のお守りを持つことと人間の行動の関係を調べた研究があります。
2010年に学術誌 Psychological Science に掲載された研究では、お守りに関する言葉や行動、幸運のお守りの存在が、課題への取り組みや成績にどう影響するかが調べられました。
実験参加者が持参したお守りには、幸運の石も含まれていました。
研究では、特定の実験条件において、お守りがある人の方が課題の成績が良く、その背景には「自分にはできる」という感覚(自己効力感)が関わっていると報告されています。
また、2018年には、幸運のペンを渡された人がストレスを伴う課題で感じる不安について調べた研究もあり、その条件では、不安が低くなる結果が報告されています。
これらは、石そのものの不思議な力を測定した研究ではありません。
幸運をもたらすと考えられる物を持つことが、人間の期待や安心感、行動に関わる場合があるという研究です。
お守りには、人とのつながりを思い出す役割もある
日本のお守りについて調べた研究もあります。
2006年に発表された研究では、お守りを持つ理由が超越的な力への期待だけではなく、家族や友人から贈られたことにも関係していると報告されました。
お守りが、贈ってくれた人の支えを思い出すものになる場合もあるということです。
これは、物を大切にする理由が一つとは限らないことを示す例ですね。
同じお守りでも、人によって結びついている経験や意味は違うのです。
「持っていると安心」と「持っていないと怖い」はどう違う?
ここからは、そとがわメソッドの視点で考えてみましょう。
「この石が好き」
「持っていると安心する」
という感覚があったとします。
そこに、
「これがないと守られない」
という前提が加わったらどうでしょう。
石を持っていることが安心につながるだけでなく、持っていない状態が危険であるかのように感じられることがあります。
すると、石を忘れたことが単なる忘れ物ではなく、何かを防げなくなった出来事として受け取られるかもしれません。
そうなれば、石を取りに戻りたくなるのも、何度も確認したくなるのも、不思議ではありません。
その人にとっては、必要な行動になっているからです。
ここで「そんなことを信じるべきではない」と判断する必要はありません。
むしろ、
何が起きると予測しているから、その行動が必要になっているのだろう?
と見てみる。
それだけでも、今まで見えていなかった部分に気づくことがあります。
好きなものを、好きなまま楽しんでいてもいい
パワーストーンが好きなら、好きでいい。
美しいから身につけたい。
大切な人からもらったから持っていたい。
願いを込めて選ぶ時間が楽しい。
どれも、その人にとっての意味があります。
そして、その意味があることと、不安によって行動が制限されることは、別の話です。
「持ちたい」と感じているのか。
「持っていなければいけない」と感じているのか。
似ているようで、そのとき必要になっている行動は違うかもしれません。
どちらが良い、悪いということではありません。
自分の中でどんな前提が働いているのかを知れば、ほかの見方ができる可能性も生まれます。
人間の認識や反応が成立する仕組みを、もう少し詳しく知りたい方へ
そとがわメソッドの無料講座では、出来事に意味が加わり、反応や行動が生まれていく仕組みを順番に説明しています。
パワーストーンで安心する自分を、どう観察できるだろう?
例えば、こんな問いを置いてみることができます。
「この石を持っているとき、私は何が大丈夫だと感じているんだろう?」
「もし石がなかったら、何が起きると予測しているんだろう?」
「その予測は、どこから生まれたんだろう?」
ここで、無理に答えを出す必要はありません。
石を手放す必要もありません。
考え方を変える必要もありません。
ただ、石について考えているつもりだったとき、自分の中ではどんな出来事が起きていたのかを見てみる。
パワーストーンの効果についての議論とは別に、そこには観察できる人間の仕組みがあるのです。
よくある質問
Q. パワーストーンで安心するのは、思い込みということですか?
「安心している」という体験そのものは、その人に起きていることです。
その安心に、石への期待や過去の経験、思い出などが関わっている可能性はあります。
ただし、心理的な仕組みが関わることと、石そのものの作用について結論を出すことは別です。
Q. パワーストーンを信じることは、やめた方がいいのでしょうか?
この記事は、信じることをやめるためのものではありません。
信じているとき、何を期待し、何を予測し、それによってどんな反応が起きているのかを考えるための記事です。
信じるかどうかの答えを用意する必要はないのです。
Q. 石がないと不安になる場合は、どう考えればいいですか?
「石がない」という出来事と、「石がないと悪いことが起きるかもしれない」という予測を分けてみると、何に反応しているのかが見えやすくなるかもしれません。
不安になること自体を、さらに責める必要もありません。
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願うことと、「まだ叶っていない」という受け取り方がどう関わるのかを考えたい方へ。
→ 出来事より「意味づけ」が苦しさを大きくするとはどういうこと?
同じ出来事から違う反応が生まれる仕組みを、もう少し具体的に知りたい方へ。
自分の中で当たり前になっている前提について、別の角度から考えたい方へ。
参考研究
- Damisch, L., Stoberock, B., & Mussweiler, T. (2010). Keep Your Fingers Crossed! How Superstition Improves Performance. Psychological Science, 21(7), 1014–1020. 研究論文
- 荒川歩・村上幸史(2006)「『お守り』をもつことの機能:贈与者と被贈与者の関係に注目して」『社会心理学研究』22(1), 85–97. 研究論文
- Lasikiewicz ほか(2018)The effect of superstitious thinking on psychosocial stress responses and perceived task performance. 研究論文
これらの研究は、お守りや幸運に結びつく物と人間の心理・行動との関係を調べたものです。パワーストーン固有の作用を実証する研究として紹介しているわけではありません。
好きなものを否定しなくても、自分の中で起きていることを知ることはできます。
そとがわメソッドでは、日常の出来事や人間の反応を、善悪正誤で判断するのではなく、その仕組みから観察していきます。

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